研究課題/領域番号 |
19K12628
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
田中 宏志 島根大学, 学術研究院理工学系, 教授 (10284019)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | スパースモデリング / 核密度解析 |
研究実績の概要 |
2021年度は主に2つのテーマについて研究を行なった。1つはスパースモデリングを行う際に必要な任意パラメータの最適化である。スパースモデリングでは実験的に得られていない情報についてデータがスパースであるという仮定の元に解析を行う。その際にスパース性をコントロールするパラメータに任意性がある。スパース性が弱いと十分な推定が行えないが、強すぎると過適合をおこし、物理的に正しくない推定をしてしまう。そこで、もっとも確からしい核密度分布を再現するパラメータの最適化を試みた。本研究ではデータのスパース性をL1/2ノルムの大きさで制御しているが、解析の結果スパース性がない場合のL1/2ノルムの値に対して半分程度の値を収束値となるようにスパース性を調整すると最も確からしい各密度分布が得られることがわかった。この結果は、秋の日本物理学会で発表した。 もう一つは、スパースではない核密度分布に対してスパースモデリングが有効かどうかの検証である。そのために時間平均された核密度分布が空間的に広がっているイオン伝導体に対してスパースモデリングで解析を行い、最大エントロピー法による解析結果と比較した。最大エントロピー法はスパースモデリングと異なり、できるだけ一様な核密度分布を再現する傾向にあるため、空間的に広く分布する核密度には有効である。解析の結果、スパースモデリングは最大エントロピー法と定量的にほぼ同じ核密度分布を与えることがわかった。 このことは、スパースモデリングが広がった核密度を無理にスパースにすることはなく、局在した核密度も局在していない核密度も両方解析できるスパースモデリングは最大エントロピー法よりも優れていることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定に対して遅延なく研究が進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題はコロナの影響で学会などがオンデマンドになったため、研究費の一部を2022年度に繰り越したが、2021年度が最終年度であり、ほぼ申請時の計画通りに研究を遂行できたと思う。今後は本研究課題で得られた知見を発展させて新しい解析手法の開発を行なっていきたい。具体的には、本研究課題からスパースモデリングがスパースではない系の解析にも有効であることがわかってきた。そのため、電子密度解析のように従来最大エントロピー法が用いられてきた系にもスパースモデリングが適用可能では無いかと考えている。 最大エントロピー法は対称性の高い系においてしばしば正しくない結果を与えることが分かっている。スパースモデリングを用いるとこうした不具合が解消されるのでは無いかと期待している。さらに、電子密度のように非局在な密度分布から核密度のように局在した密度まで1つのアルゴリズムで解析が可能になれば量子ビーム科学の分野で大きく貢献できるのでは無いかと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナのため、多くの学会がオンデマンド対応になったので学会発表などを2022年度に延期したため。
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