令和5年度はスパースモデリングを電子密度のようにスパースではない系にも適用可能かどうかを調べた。その結果最大エントロピー法と遜色ない結果が得られることがわかった。一方で対称性の高い系の解析でしばしば見られるアーティファクトはスパースモデリングでも現れることを確認した。そこで深層学習によりアーティファクトを検出して除去することを目指し、まずはアーティファクトの検出が可能かどうかを調べた。その結果教師あり学習によりアーティファクトの検出が可能であることがわかった。その成果をもとに日本物理学会で2件の発表を行った。 次に科研費により助成を受けた期間における研究成果をまとめる。本研究課題では中性子線回折データをスパースモデリングにより解析することで従来使われてきた最大エントロピー法よりも詳細な核密度分布を求める手法の開発を行った。この方法をKDPの常誘電相に適用すると水素原子が2つのサイトに分かれて存在することが明確に示せた。これは他の解析法ではできなかったことで、スパースモデリングによる解析の優位性を示しており、その成果をJ. Phys. Soc. Jpnに投稿して注目論文に選ばれた。 本研究では、この方法をさらに改良してより使いやすい手法とした。1つは粉末の回折データなどで反射が重なった場合に解析を行うG-typeと呼ばれる解析テクニックの導入である。また、スパースモデリングにはスパース性を制御するパラメーターの選び方に任意性がある。そこでこのパラメーターを最適化する方法を求めた。これらにより我々の開発した方法は詳細な核密度分布を解析できる手法として確立することができた。以上の成果は2本の論文と6回の学会発表により公開されている。
|