研究実績の概要 |
令和3年度では,ディープフォーカスゾーンプレートの設計パラメータの探索を軟X線領域領域まで広げた.計算ではX線のエネルギーを285 eV, ZPの材質をTa, 内側ZPの最外線幅を45 nm(空間分解能の期待値55 nm)と仮定した. 内側ZPの半径を120 μmとし, その時の焦点距離fは 2.482 mmである.また, ZPの中心に半径47.5 μm, 厚さ1.0 μm, 金を材質とするセンターストップを考え, 計算を行った. これらのパラメータは,分子科学研究所極端紫外光研究施設で稼働中の走査型軟X線顕微鏡で使われているゾーンプレートに合わせたものである.回折積分では, 外側ZPの内側ZPに対するゾーン厚比η, 外側ZP半径に対する内側ZP半径の比ε, 外側ZPの初期位相ζなどを変数とした. 外側ZPの1次回折の焦点距離f_ouを内側ZPの焦点距離fと焦点深度d_fを用いてf_ou=3×f + df_p×d_f としてdf_pで微調可能とした. 内側ZPのゾーンの厚さt_inは位相ZPとして最大効率を与える0.166 μmとし, 固定した. 計算の結果, η = 0.59, ε = 0.82, df_p = 0.93であるとき, 焦点深度を従来のZPと比較して約1.9倍に拡大することができた. またこの時の空間分解能は, 概ね維持されていることがわかった. 以上より, 空間分解能を概ね保ったまま焦点深度を拡大することができる解を見つけることができた. この成果を,「軟X線顕微鏡用ディープフォーカスゾーンプレートの設計と集光特性」(藤井綾香,高山裕貴,篭島靖)と題して,Optics & Photonics Japan 2021にて口頭発表(オンライン)した.
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