基盤研究(C)「回折限界を超えるX線用回折格子型集光素子の提案とシミュレーションによる原理検証」(H28~30年度)において,空間分解能の劣化を抑えつつ焦点深度を拡張可能な新しいタイプのX線光学素子である Inverse-phase composite zone plate(IPCZP)を発案し [査読付プロシーディングスで発表],シミュレーションを実行し空間分解能の劣化を8%にとどめ焦点深度を2倍にできる設計値を発見した[査読付論文で発表].これにより当該研究の目的は達成された.しかしその設計値はゾーンの格子構造の最大アスペクト比が30を超えており,現状の加工技術では製作が困難である.本研究では,現状の加工技術で製作可能な回折限界を超える空間分解能と焦点深度が得られる実用性のある設計値を見いだすことを目的とした. 研究期間全体を通じてIPCZPによる、①集光面の光波の複素振幅分布を計算するFortranコードの開発、②パラメータの詳細設計と主要性能(空間分解能と焦点深度)の算出、③複数のパラメータを網羅的に変化させて計算できるプログラムの開発、④設計パラメータの精緻化、⑤設計パラメータの探索を軟X線領域領域まで拡張、を順に進めた.硬X線領域では,X線のエネルギーは8から12 keV、目標の空間分解能は100 nmとして設計し、性能を評価した.その結果、アスペクト比を30から8に下げても空間分解能と 焦点深度は概ね維持されることがわかった。軟X線領域では,X線のエネルギーは285 eV、目標の空間分解能は55 nmとして設計し、性能を評価した.その結果、空間分解能の劣化を1.1倍に抑えつつ焦点深度は1.9倍に拡大できることがわかった。 これらの成果を,国際会議のポスター発表1件、同会議のプロシーディングス1件[査読あり]、国内会議の口頭発表2件、ポスター発表1件で発表した。
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