研究課題
初年度は、取り出し凹面鏡入退用真空チャンバー機器の設置と調整を主に行った。2年目は、アンジュレーター(周期磁気回路)で生成される広がりの大きなテラヘルツ光の輸送損失の軽減を目的としたアンジュレーター用ダクトの変更を行い、同加速器で達成したことのない13.5 MeVもの低いエネルギーでの電子ビームを安全に通すことに成功している。最終年度である3年目では、テラヘルツ領域に感度を持つパイロ検出器や中赤外を含む短波長域遮断フィルムなどの測定機器を設置し、低いエネルギーでの電子ビームの位相調整の上でアンジュレーター磁場との相互作用による自発放射実験を行い、電子ビームに由来する有意な強度のテラヘルツ光の測定に成功した。研究期間のうち、特に2年目以降では社会活動に支障を来す新型コロナウイルスの事態が起こり、3年目も含め複数回に渡る直接的行動制限や、また、教育構造の急激な変革への対応など間接的時間制限を受けることとなった。他、機器の故障や他のユーザー利用実験との兼ね合いもあり、運転時間は当初予想していたよりも大幅に制限されるに至ったが、結果的に検出器で測定可能となるほどの有意な強度のテラヘルツ領域のアンジュレーター放射の測定が行えたのは本研究の成果である。ただ、残念ながら運転時間の制限が大きく影響し、発生した波長成分の分光解析や電流変化によるコヒーレント性の確認実験までには至っていない。なお、本研究遂行過程において得られた知見を基に、新たな研究課題の発案に繋がっていることにも言及しておく。これは、宇宙で観測されている原因不明の高速電波バースト現象に対し、コヒーレント放射を含む増幅現象をヒントに加速器を用いて実験室で再現することを目的としたものである。この独創的なプロジェクトに関して、加速器とは異なる分野での国際会議において招待講演を行うに至っており、本研究の副産物としての有意な成果である。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
Proceedings of the 12th International Particle Accelerator Conference
巻: IPAC2021 ページ: 1663-1665
10.18429/JACoW-IPAC2021-TUPAB116
Proceedings of the 18th Annual Meeting of Particle Accelerator Society of Japan
巻: PASJ2021 ページ: 404-407