研究課題/領域番号 |
19K12635
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
大久保 猛 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子ビーム科学部門, 主幹研究員 (40446456)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ナノビーム / マイクロビーム / イオン配列 / 微細加工 / 小型装置 |
研究実績の概要 |
イオンマイクロビームは、量子コンピュータに必要な量子ビットを超精密に配列したり、光通信での新たな光学素子を微細加工で製作したりできる技術である。研究の全体構想は、ビームの加速・集束を静電場で同時に行う加速レンズを利用して小型装置でイオンマイクロビームを形成し、大きさが1メートル立方程度に収まる超高精度イオン配列・微細加工装置を開発することである。本研究では、そのプロトタイプである小型イオンマイクロビーム装置の空間分解能向上を目的として、独自開発の超高電場加速レンズを導入して縮小率を大きくし、ビーム径の縮小を追求する。 令和3年度は、前年度に量子ビットの超精密配列に必要なイオン源として決定したレーザー冷却単一イオン源の導入を目的として、このイオン源から発生するイオンを入射するレンズ系の解析を行った。研究協力者であるQST石井を中心として解析を行った結果、従来の加速レンズ系を新しいイオン源に適用することはできないことが判明したことから、新たなレンズ系の検討が必要となった。そこで、アインツェルレンズと加速レンズをレンズ系の候補として決定した。 また、本装置を微細加工に応用する場合には、比較的大きな電流値のイオンビームが必要となることから、従来用いてきたデュオプラズマトロン型イオン源の検討も継続した。これまでデュオプラズマトロン型水素イオン源から発生するイオンビームの集束を行ってきたが、高精度の微細加工を行うためには、ビーム内の水素イオン種を厳密に分別して利用する必要がある。そこで、イオン源のパラメータと水素イオン種の構成を計測した結果、ビーム内には2原子水素イオンと3原子水素イオンが主に含まれ、イオン源内の水素ガス圧を最適化することによって利用したいイオン種の構成比を高められることがわかった。また、高アスペクト比加工が可能な1原子水素イオンの発生も確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度はコロナ禍に見舞われたことから、研究の進捗が阻害された上、半導体不足により早期の物品購入が困難な状況となった。また、研究代表者が企画部署に配属されていることから、研究に若干の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的であるビーム径縮小の追究のため、レーザー冷却単一イオン源に適応できる小型イオンマイクロビーム装置のレンズ系開発を進める。研究協力者の石井をはじめ、研究代表者が併任で所属するプロジェクトの構成員と協力して本研究を円滑に進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍及び研究代表者の企画部署配属により、研究の進捗に遅れが生じたほか、半導体不足により物品の早期購入が困難な状況であったため。当該研究費は、レーザー冷却単一イオン源及びそれを搭載する小型イオンマイクロビーム装置の開発に使用する計画である。
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