研究課題/領域番号 |
19K12640
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研究機関 | 公益財団法人高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
亀島 敬 公益財団法人高輝度光科学研究センター, XFEL利用研究推進室, 主幹研究員 (50558046)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | シンチレーター / X線 / イメージング / 空間分解能 / 高エネルギー |
研究実績の概要 |
20~100keVの高エネルギーX線領域のイメージングは医療・産業においてニーズが高いことに加え、その検出効率の改善・高解像度化・広視野化を同時に求められている。しかし、高エネルギーX線像を高い解像度でイメージングする場合、X線の検出部を薄くしなければならないため、X線の検出効率が低下する。本研究は、X線の検出効率を保持しつつ高い解像度を得ることが出来るX線の検出素子の開発することでこの課題を解決することを目的とする。目標はその実用性の証明となる。 本研究を計画時と比較し、より高いエネルギーである200keVの利用が盛んに議論されるようになった。即ち、X線イメージング検出器への要請として、より高いエネルギーに対する感度向上が追加された。提案していたシンチレーター封止型のX線検出素子のシンチレーターは、検出感度を上げるためにより高いアスペクト比で製作する必要があるが、技術的に5~10が限度である。つまりは、50um分解能とした場合に、シンチレーター高さを500umとなる。200 keVのX線の透過力は極めて高いため、検出効率を上げるにはより厚いシンチレーターが必要となる。この場合、従来の構造であるレンズ結像型のX線イメージング検出器のシンチレーターを厚くした方が検出量子効率(DQE)が高くなる可能性が出てきた。これを踏まえ、2020年度はX線イメージング検出器のDQEを定量的に見積もれるモデルを構築し、異なるX線イメージング検出方式においてDQEを直接比較することを検討した。提案したモデルを用いると、レンズ結像型のX線イメージング検出器は3.95 mm厚のLuAG:Ceを用い、レンズ開口数を0.0962とすることで50umのL&Sをカットオフとする空間分解能に到達できることが見積もられた。そのDQEは200keVのX線に対して54.1%と極めて高い値となることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
X線イメージング検出器には半導体で直接X線を検出する直接変換方式、シンチレーターで1度可視光に変換し、半導体センサーで間接的にX線を検出する間接変換方式の2つに分けられる。後者は更に、レンズ結像型と、ファイバーオプティクスプレートのような導波路型とに区分される。これらの検出量子効率(DQE)を比較することで、X線エネルギーや空間分解能毎に最適な検出方式を決定すべきであるが、特に間接変換方式の指標は曖昧であり、その開発指針も立てづらい状況にあった。2020年度は検出器構成からDQEを見積もることができるモデルを構築できたため、より精度の高い設計値や開発指針を立てることができるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
世界的に、高いエネルギー領域のX線の検出においては導波路型の間接変換型の方式で検討を進めている。一方で、2020年度の研究でX線が高いエネルギーとなるとLight yieldが大きくなるので光の回収効率の要求は緩和されるため、シンチレーターを厚くし、比較的NAが小さいレンズ結像型の検出器を用いることで高いDQEを得ることが可能となることが分かった。今後は当初の提案にあった新しい導波路型のシンチレーター蛍光封止による手法の検証に加えて、レンズ結像型の性能の最大化による目標の達成を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
目標であるX線エネルギー、空間分解能に変更があり、検出器構成に大幅な見直しが必要となった。2021年度は2020年度に構築したモデルに応じて設計されたシンチレーター・結像レンズ光学系・イメージセンサーを搭載したカメラを構築する際に必要な物品を調達する。
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