次世代の放射光回折限界リングSPring-8-IIにおいて高エネルギーX線(本報告書では30~200keVを指す)の強度が顕著に上昇するため、高エネルギーX線に対する検出器の感度の重要性が高まっている。また、医療・産業界においては100~200keV領域のニーズが高い。このエネルギー領域では、シリコン半導体イメージセンサの感度は極めて低く、適用は難しい。このような背景から、高エネルギーX線を有効に活用するため、高エネルギーX線に対し高い感度を持つ広視野・高空間分解能イメージング検出器の開発が望まれている。 前年度にX線イメージング検出器の検出量子効率(DQE)を定量的に見積もれるモデルを構築した。これを用いることで、撮像条件:光子エネルギー・空間分解能に応じて、DQEを最大値とする検出器パラメータの特定が可能となった。最終年度である2021年度は、本モデルをベースに、10~200keV領域で5種のX線画像検出器の設計・開発を実施した。また、内2つは性能評価を完了し、15×11 mm2の全視野で1.2um line and spaceを解像、7.6 x 5.7 mm2 の全視野で 0.5um line and spaceを解像する近回折限界性能に到達した。200 keV用途53x40mm2視野のX線画像検出器の設計も完了し、現在製作中である。近回折限界性能において4um line and spaceを解像できる性能で200keVに対するDQEは10%に到達する。オプション構成として、分解能を20um line and space に下げればDQEは32.4%まで改善する見込みである。この空間分解能は研究当初に目標としていた空間分解能50um line and space、200keV DQE 14%を大きく超えた性能である。
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