研究課題
エッチング型飛跡検出器の中で最も高い感度を有するポリアリルジグリコールカーボネート(PADC)と検出閾値がPADCよりも高くプロトンやHeイオンには感度を持たないポリエチレンテレフタレート(PET)を対象として、Geant4-DNAコードによる2次電子の飛跡構造に基づく物理指標の適用可能性を検討した。イオントラック内径方向電子フルエンス(REFIT)はイオンの軌跡をその軸とする円柱の側面を通過する電子密度として定義される。PADCのプロトンとHe及びCイオンの閾値におけるREFITを求めるとそれぞれが互いにファクターで一致しており、2個以上の電子によるヒットが生じると高感受性部の損傷が生まれ、径方向に2つ以上の高感受性部が損傷を受けると、エッチピットを生み出すイオントラックになるという28MeV 電子線の結果と符合する結果が得られた。このREFITを、BとC、N、O、Si、及びFeイオンに対するPETの閾値に対して求めたところ、半径0.5 nmにおいて10 電子/nm2以上を持ち、半径4 nmにおいて0.8 電子/nm2以上を維持している場合にエッチピットが生まれていることが確認された。いずれも従来の物理指標よりも高い相関を示す結果であった。また、2次電子の相互作用数(NISE: Number of Interactions induced by Secondary Electrons)についてもGeant4-DNAコードにて計算した。これはある半径をもった円柱内部の相互作用点のトラック単位長さあたりの数として定義される。PADC検出器の感度についてはNISEがより高い相関を示していることが明らかになった。イオントラックの形成機構に基づき、電子の飛跡構造に従って検出器の閾値や感度を議論できるところが、従来の物理的指標と比較した場合のREFITやNISEの優位点である。
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