本研究ではフォトレジスト中の官能基の分布を、共鳴軟X線散乱と共鳴軟X線反射率により測定する。2021年度は反射配置でのフォトレジストの散乱測定を中心に研究を進めた。 これまで散乱測定ではフォトレジストを窒化シリコンメンブレンに塗布して、透過配置で散乱を測定していた。開発したコンパクトなCMOSセンサを用いることで、ウェハ上のフォトレジストの散乱を測定することに成功した。メンブレンは塗布が難しく、実際の条件で塗布されたフォトレジストを測定することができなかった。ウェハにすることで、半導体製造に用いる条件で塗布された、ウェハ上のサンプルを測定することができる。例えばベーキング温度による凝集の違いなど、細かなであるが重要なプロセス条件の評価が可能となる。 本研究にて開発したCMOSセンサは感度がよく、1光子検出が可能であるため、従来のCCDカメラより短時間での測定が可能となった。また、高速読み出しであるため、中心遮光板が必要でなく、実験セットアップもシンプルにできた。 2021年度は様々な条件でのサンプルの測定を進め、反射配置での散乱データの取得した。散乱データより散乱強度が強くなるエネルギーの条件や、レジスト厚さによる散乱強度などの違いについて測定することができた。特に強度の強いqz方向だけでなく、qy方向の散乱を高感度に測定できたことで、フォトレジストの面内の凝集の様子を評価できる。よって、本研究で開発した散乱測定装置により、実際のプロセスと同様のウェハ上のフォトレジストの評価ができるようになった。炭素吸収の大きな296 eVでの測定では、レジスト厚さによる散乱信号はほぼ一致し、高い測定再現性が得られた。また、炭素吸収の小さな280 eVでは薄いレジストほど散乱信号は増加し、厚さによるレジスト内部の凝集が変化していることをはっきりと示すことができた。
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