研究課題/領域番号 |
19K12649
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
満田 史織 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 准教授 (60425600)
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研究分担者 |
高井 良太 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 准教授 (20533780)
小林 幸則 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 教授 (40225553)
原田 健太郎 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 准教授 (70353365)
高木 宏之 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 准教授 (80251487)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超小口径12極型セラミックス一体型キッカー / セラミックスと銅コイル埋め込みロウ付け技術 / 円筒内面微細形状コーティング技術 / 6コイルセラミックス埋め込み技術 / ビームインピーダンス低減コーティング / セラミックス円筒内面銅材パターンコーティング |
研究実績の概要 |
課題研究の2年目は、超小口径セラミックス円筒におけるコイル埋め込み技術の高度化を狙った埋め込み数の増加、ビーム壁電流に対するビームインピーダンスの低減を目指したコーティング材質と膜厚の改善と精密パターンコーティング技術の開発が進められた。いずれもセラミックス一体型キッカーを実加速器で使用するうえで、磁場形状の精密化やビームによる発熱を抑制する重要な課題である。コーティング形状の磁場測定実験、シミュレーション研究から、磁場形状が遇関数、奇関数であるかにより、また、コーティングを塗布するセラミックス形状が円筒、角型であるかによりコーティング形状の最適化が異なることが解明された。 コイル埋め込み数の増加では、直径40mmの超小口径では、コイルの埋め込み数が増えロウ付け時熱膨張による破壊応力が増大したため、6コイル中5コイルで1.3×10-11Pa・m3/sの気密保持された埋め込みに成功した。これは昨年度、開発に成功した「分割コイル埋め込み技術」の実装に依るところが大きい。埋め込みコイル位置精度は、規格値に対して50μm~200μmとばらつきがあるが当初計画精度を満足する。1コイルの気密保持が不完全で、今後加速器実装する上では課題を残すこととなった。ビームインピーダンスの低減には、壁電流の抵抗性インピーダンスを低減する必要があり、コーティングの材質をチタンから銅、膜厚を5μmから50μmに増加させる開発を行った。平板試験片では銅コーティングを30μmの膜厚で精密パターンコーティングの実装に成功した。 昨年度、開発に成功した4コイル、八極型セラミックス一体型キッカーのKEK-PFリングでのビーム入射実証試験へ向けたインストール準備は計画通りに順調に進行している。インストールに伴う付帯設備の製作は完了し、高次パルス多極入射技術の実証試験は予定通り2021年度中に開始される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、セラミックス一体型キッカーの技術的要となるコイル埋め込み技術は小口径化するに従い成立性が難しく成ることが分かっており、それに加え埋め込みコイル数を増加させることには高度な技術開発が求められていた。実際の製作技術の確立には至っていないが、基礎技術を構築し実証する水準には到達している。この技術の完成度を高め、埋め込みコイル数の増加に対応した製作性の向上が残された課題となっている。パターンコーティング技術の高度化は、こちらも順調に基礎技術開発に成功している。セラミックス一体型キッカーは円筒セラミックスであるため円筒構造に、この基礎技術を展開させる必要があるため、2021年度は計画通り技術の展開が図られる予定である。 本件課題研究は、技術的な課題と、物理的な課題の2つの側面からアプローチがなされている。物理的な課題として重要なテーマは既存電磁石構造で困難であったセラミックス一体型キッカーを利用したパルス多極電磁石入射技術の有用性の検証である。KEK-PFリングに八極型セラミックス一体型キッカーを実際にインストールしビーム物理実験を通じて2021年度中に検証が開始される。検証のためのセラミックス一体型キッカーは2019年度に完成しており、2020年度にはインストールのための付帯設備の準備も完了した。2021年度はKEK-PFリングのユーザー運転状況と調整しインストールされる。 以上より、基礎技術開発も、ビーム物理実験の準備も進み、順調に計画は推進出来ていると判断できる。基礎技術開発が完了し、技術の完成度を高めることや、技術の展開を図ることが残された課題とされているが、いずれも開発の段階としては想定通りであり、当初計画通りに進展している進捗状況となっている。
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今後の研究の推進方策 |
3カ年計画の2カ年目実施計画は順調に推進された。3年目の計画では、セラミックス一体型キッカーを使ったパルス多極電磁石入射技術のビーム物理実験による実証試験が大きな計画である。まずは、準備された付帯設備とともにインストール準備作業に入る。インストール点の上下流整合真空ダクト、セラミックス一体型キッカーのベーキング、加速器に実装が可能かどうか判断するためのキッカーのコンディショニング、オフライン耐久試験、設計通りのキック力を有するかどうかの磁場測定が進められる予定である。インストール後は、実ビームを使い模擬入射試験を行う。入射試験では事前に進められているビーム物理シミュレーションにより得られた入射パラメーターの最適値を適用する。加速器リングは必ずしも理想通りのリング設計となっていないため不定性は必ず存在するが、それらは、ビーム物理シミュレーションで実状況をフィードバックさせ判定改善させていく。 埋め込みコイル数増加によるセラミックス一体型キッカー製作技術の高度化は、2年目の計画に入り、製作性を向上させる技術開発が継続される。6コイル全数の気密性の確保が、セラミックス一体型キッカーとして成立するには重要であるが、一体成型のロウ材ボリュームの制御が課題であることが判明しており、パラメーターの再最適化が図られる計画である。 パターンコーティングの技術開発も当初計画通り2カ年目の計画に移行する。平板試験片で完成した銅コーティングによる膜厚増強を円筒構造でも実装可能にするためには、下地処理と膜厚の組み合わせが鍵となることが分かっている。円筒構造に最適な組み合わせが解明され、円筒型実装に移る計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度内に生じた製作物の経費が当初予定よりもコストダウンが図られ、低く抑えることが出来たため予定額との間に差額が生じている。 コロナ禍において差額分の執行を進める猶予期間が短かったため、次年度に今期製作物の微細な追加加工費用として執行を計画する
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