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2019 年度 実施状況報告書

物質中水素の中性子コンプトン効果

研究課題

研究課題/領域番号 19K12650
研究機関大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構

研究代表者

池田 一貴  大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特別准教授 (80451615)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード中性子散乱 / 水素 / 同位体 / 干渉性散乱
研究実績の概要

中性子は原子核により直接散乱されるため物質中の水素位置を決定することに適していると言われているが、実は重水素だけに有効で、中性子と同等に軽量な軽水素に対しては反跳現象による非弾性散乱過程のために不向きである。そのため、重水素化が困難な物質の中性子散乱による精密な構造解析は妥協されてきたが、応募者は最近、従来は一定であるとみなされてきた干渉性散乱断面積が散乱角依存性を示し、この傾向が水素の有効質量(化学結合性)によっても異なることを見出し、定量評価の可能性を得た。そこで、本研究では、水素の多様な化学結合状態に着目して同様の評価を展開するとともに、非干渉性散乱断面積については水素ガスの散乱データを対象として、中性子散乱による水素の反跳現象を理解する。また、補正方法を検討することにより、水素化物の高精度な構造解析を可能にする。
2019年度はアルカリ(土類)金属水素化物や錯体系水素化物など、水素の様々な化学結合状態を示す典型的な水素化物の中性子回折測定を実施して、干渉性散乱断面積の散乱角および中性子波長に対する依存性を評価した。予備実験よりもさらに多様な水素の化学結合状態と干渉性散乱断面積との相関が示されたため、水素の中性子散乱による反跳現象を理解するために不可欠な結果が得られた。さらに、結晶構造因子に対する干渉性散乱断面積の変化も把握できたため、補正を施したうえで結晶構造解析を行うことにより精密化の信頼度因子が向上することを確認できた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

アルカリ(土類)金属水素化物や錯体系水素化物など、様々な水素の化学結合状態を示す典型的な水素化物について中性子回折測定を行い、干渉性散乱断面積の散乱角および中性子波長に対する依存性を評価したところ、予備実験で解析した傾向に加え、結晶構造因子に対する情報も得られた。また、回折データに対してRietveld解析を実施したところ、補正によって結晶構造解析の信頼度が向上することも確認できたため、本研究は当初の計画以上に進展している。

今後の研究の推進方策

2020年度は典型的な水素化物の中性子回折測定を可能な限り低温から高温まで行い、特に水素の結合状態が変化する構造相転移前後に対して干渉性散乱断面積の散乱角および中性子波長に対する依存性を本年度と同様に評価する。また、当初の計画通り、水素ガスの中性子散乱データとの比較を行う。これらにより、物質中水素の静的な化学結合状態だけでなく、水素が伝導や拡散する条件についても解析することにより、物質中水素の中性子散乱による反跳現象の本質的な理解を目指す。

次年度使用額が生じた理由

2019年度は中性子散乱実験を実施したJ-PARC(大強度陽子加速器施設)MLF(物質・生命科学実験施設)の利用運転が順調であったため、当初の計画よりも効率的に少ない消耗品でデータを取得することができた。2020年度は当初の予定よりもさらに深化した温度変化に関する実験や高圧ガス下の実験を予定しており、費用が必要であるため消耗品の購入に充てる。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2019

すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [学会発表] Structural Study of Hydrides by High Intensity Neutron Total Diffractometer (NOVA)2019

    • 著者名/発表者名
      Kazutaka IKEDA
    • 学会等名
      MATERIALS RESEARCH MEETING 2019
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2021-01-27  

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