研究課題/領域番号 |
19K12656
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
土佐 尚子 京都大学, 総合生存学館, 特定教授 (40521117)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 流体現象 / 有機的形状 / 高速度カメラ / 同期撮影 / 3次元復元 |
研究実績の概要 |
本研究では、流体の物理現象(具体的にはスピーカーの上においた流体に音の振動を与えることによって、流体が微小時間に多様性・有機性に富んだ造形を作り出す現象)を多数のカメラを用いた同期撮影を行うことによって捉え、流体現象の3次元モデルを作成し3次元造形物として取り出す方法論を確立すると共に、その方法論をパブリックアートや日用品・車などのデザイン、さらには建築物の設計などに応用することをめざしている。具体的には、(1)物理現象の3Dモデルデータ化の研究、(2) 3Dモデルの固体への成型法の研究、(3)彩色法の研究、(4)成果の活用法の検討、の4項目の研究を行う。 平成31年度は、主として項目(1)を対象として、具体的には以下の検討を行った。当初は複数台のスチルカメラを用いた同期撮影を行うことにより、流体現象の3Dモデルを作成することを目指していた。しかしながら、高速度カメラによる撮影で初めて捉えられる微小時間に生じる現象を、スチルカメラで捉えることが困難であることがわかった。そこで、スチルカメラではなくて複数の高速度カメラを用いることとし、毎秒1000フレーム/秒で撮影可能な高速度カメラ8台をスピーカーの周囲180度を囲むように配置し、これらの高速度カメラで流体現象を同期撮影した。さらにその撮影結果から、流体現象の3次元の時系列画像を取得現象を取得すると共に、流体現象を最もよく表現している時点の8枚の画像を取り出し、これらの画像から市販のソフトを用いて3次元モデルを復元することに成功した。これによって32年度以降の上記の(2)、(3)、(4)の項目を研究する準備が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の項で述べたように、当初の計画では複数台のスチルカメラを流体現象を生じさせるスピーカーの周囲に配置して、これらを同期撮影することによって種々の異なる方向から流体現象を撮影した複数の画像を得て、それらの画像から流体現象の3次元モデルを復元することを計画していた。しかしながら、流体現象は1秒以内の短時間に生じ、しかもその時間内に期待する美しい有機的形状が生じるのは極めて微小時間であり、毎秒2000フレームの高速度カメラで初めて捉えられる現象である。そのため、予備実験として行った複数のスチルカメラの同期シャッターを手動で切る方法では、期待するような画像が得られないことがわかった。これは、これまでの研究からある程度予想されることではあったが、予備実験を行って初めて確認できたことであった。 この問題を解決するためには、複数台のスチルカメラではなくて複数台の高速度カメラを用いることが必要であると判断し、従来から用いてきた毎秒2000フレームの高速度カメラを購入した業者に依頼して、毎秒1000フレームの小型高速度カメラを8台期間限定で借りることとした。さらに、それらの高速度カメラをスピーカーの周囲180度の範囲に配置して同期撮影を行った。このように、従来から用いてきた高速度カメラに近い性能を有する高速度カメラ2を用いて撮影した画像を解析することによって、期待する美しい有機的な形状を持つ物理現象を捉えることができた。さらに、得られた同一時刻の複数枚の物理現象の画像を入力とし、市販の3次元形状復元ソフトを用いることによって、微小時間に生じる有機的な流体現象の3次元復元に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
複数台のスチルカメラを用いた研究環境の構築から複数台の高速度カメラを用いた研究環境の構築へと高度化することができたため、平成31年度の研究は期待以上の成果が得られた。これに基づき、平成32年度以降は当初計画に沿って、(2) 3Dモデルの固体への成型法の研究、(3)彩色法の研究、(4)成果の活用法の検討、の研究を進めることとする。いずれも当初の研究計画書に記述した研究計画の内容に沿って進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在までの進捗状況の項で述べたように、当初は微小時間に生じる流体現象を複数のスチルカメラで同期撮影することを予定していた。しかしながら、予備実験によってスチルカメラを用いて手動でシャッターを押すことによる撮影では、希望する瞬間の流体現象の画像の撮影が困難であることがわかった。このため、複数台のスチルカメラではなくて複数台の高速度カメラを用いることが必要であると判断し、従来から用いてきた毎秒2000フレームの高速度カメラを購入した業者に依頼して、毎秒1000フレームの小型高速度カメラを8台期間限定で借り、それらの高速度カメラを用いて同期撮影を行った。 上記のような変更が生じたため、当初の20台の一眼レフカメラを購入する予定が、予備実験用の数台の購入にとどまった。さらには複数台の小型高速度カメラに関しては、業者から短期間無料で借用することができた。これらの変更のために、2019年度は物品購入費の使用が一部にとどまり、次年度に回すことができた。 2020年度は複数台の高速度カメラを用いた流体現象の撮影を本格的に行うため、複数台の高速度カメラに関してはレンタル料の支払い、もしくは一部の高速度カメラに関して購入をすることを予定しており、それに多額の予算が必要である。2019年度からの持ち越しに関しては、このような研究計画に使用することを予定している。
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