研究課題/領域番号 |
19K12658
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
小山 恵美 京都工芸繊維大学, 情報工学・人間科学系, 教授 (80346121)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 光環境 / 睡眠 / 調光制御 / 白色LED / 励起光 / トワイライト / 精神生理状態 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日常的な生活空間を模した環境で就寝前の光環境を制御し、光曝露中の精神生理状態および終夜の睡眠状態や起床時睡眠感を計測評価して、より自然な睡眠に望ましいトワイライト制御仕様を明確化することである。 2019年度の研究実施計画は、調光制御仕様案を複数試作し、印象評価で案を絞り込むことであった。それに先立ち、本課題前に実施した研究(昼および夜間の光曝露)の結果を見直したところ、光源の検討が必要となった。将来的な応用を考慮するとLED利用が必要であるが、これまでの研究から、白色LEDの励起光が青色光か紫色(近紫外)光かによって、同程度の相関色温度であっても、昼夜の直接的な覚醒作用や夜間就寝前の定常光曝露による消灯後睡眠状態に差異のあることが示唆された。青色励起白色LEDは現状で市販照明用のほとんどを占めているが、紫色励起に比べると、覚醒・緊張方向の作用が強く、ヒトに対する精神生理的親和性が劣る懸念があるため、普及しているからといって、青色励起だけを選定することはできない。 そのため、当初の研究実施計画を変更し、日中短時間仮眠前に光曝露を実施し、覚醒作用が相対的に少ない白熱電球を対照光源として、昼白色相当の青色励起LEDと紫色励起LEDとを比較する実験を実施した。年明け以降、COVID-19 拡大の影響で、当初予定の計測数に至らなかったが、20歳代男女12名(一部欠測含む)の解析結果から、光曝露による覚醒・緊張方向の作用は、これまでの研究同様、青色励起LEDで最も強かったが、夜間就寝前の光曝露とは逆に、日中の短時間仮眠では入眠に要する時間は青色励起<紫色励起<白熱電球の順で短い傾向が示唆されたため、就寝前の光環境制御において検討すべき要件が当初想定よりも複雑である可能性が示された。したがって、今後の計画においても2種類のLEDの比較を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
まず、これまでの研究成果を見直した結果、白色LEDの励起光による精神生理作用の違いを考慮してトワイライト光環境制御仕様を案出する必要性を確認し、実験期間短縮のため、夜間ではなく日中の仮眠前の光曝露による影響を検討する実験を追加したことで、トワイライトに応用できる調光制御の仕様案出が遅れていることがあげられる。しかし、光環境要件のうち、励起光の影響の検討は重要であるため、日中の実験の追加自体は、本研究課題を推進するうえで意義があると考えている。 次に、COVID-19 拡大の影響で、ヒトを対象とする実験を主体とする研究活動が2月頃から推進しづらい状況になり、予定していた計測数を年度内に得られなかったことがあげられる。 さらに、追加した日中の計測をするにあたって、本研究課題の前から装備していた光源の光学特性を計測し直したところ、LEDにも経年劣化がみとめられ、出力限度の制約から想定の仕様で実験ができず、新しくLED光源を準備する必要が生じ、2019年度はその検討の途中で、COVID-19 拡大の影響で対外的な直接交流がしづらい状況になり、トワイライト制御用光源の準備が遅れたこともある。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19 拡大の悪影響については、全国的な緊急事態が解除された後でも、被験者を依頼しづらい状況は続いている。これは、2019年度末での遅れにとどまらず、今後の課題推進にとっても影を落としているが、2020年度は調光制御案を絞り込むため、印象評価を主体として比較検討することに重点をおくことで、研究全体の遅れを低減するように計画を変更する。 また、計測の被験者数が減ってしまうのはいたしかたないが、新しく光源を準備するためにLEDを特注で製作購入する必要があり、研究費用の使途(物品・人件費)の割合を当初計画と変更し、物品の割合を増やして対応する予定にしている。
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