本研究の目的は、日常的な生活空間を模した環境で就寝前の光環境を制御し、光曝露中の精神生理状態および終夜の睡眠状態や起床時睡眠感を計測評価して、より自然な睡眠に望ましいトワイライト制御仕様を明確化することである。夜間光環境に関する研究は、新型コロナウイルス感染拡大の影響が継続していることから、研究計画を当初から一部変更して実施した。自然光を実測した結果をもとに、昼白色と電球色のLEDを用いて照度と相関色温度を連携して漸減制御する照明制御デザインを2020年度に作成した。2021年度は計測(約110分間の光曝露後に消灯して7時間の睡眠)を継続し、16名を対象に解析を実施した。 以前実施した終夜睡眠研究(定常光の白熱電球および青色励起・紫色励起LED使用)との比較も行うこととし、対照条件として白熱電球定常条件を用い、青色励起および紫励起LEDそれぞれに2パターンの漸減照明制御を施した。照度および相関色温度の変化は同様で、40分かけて変化させるTwilight条件と2分間で制御が終了するAcute条件を作成し、まずこの5条件を比較した。その結果、睡眠段階出現割合や睡眠潜時などの睡眠変数には照明条件による主効果はみられなかったが、入眠期の脳波δ Power値を直線回帰した傾きと睡眠潜時差には、青色励起LED条件以外で有意な負の相関がみられた。このことから、白熱電球定常条件や紫色励起LED条件の方が、入眠のプロセスがより自然である可能性が示された。次に、以前実施したLED定常光条件との比較では、漸減光制御を施した条件の方が、起床時の主観的睡眠感のスコアが有意に高かった。さらに、入眠期の相関関係は以前の研究でも同様の傾向であった。以上の結果から、漸減光環境条件は定常条件のLED照明よりも夜間就寝前光環境として適しており、特に、紫色励起LEDで精神生理的な親和性がみられる可能性が示唆された。
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