研究課題/領域番号 |
19K12660
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
伊原 久裕 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (20193633)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | isotype / animation / design history / information design |
研究実績の概要 |
本研究はアニメーションを用いた情報デザインである「情報アニメーション」の表現に関する歴史研究の試みとして、アイソタイプおよびアイソタイプに影響を受けてアニメーション制作を行った米国人デザイナー、フィリップ・ラーガン(Philip Ragan)の活動を取り上げ、同時代における社会文化状況をふまえてその意義を考察するものである。 令和元年度は、まず「情報アニメーション」なるジャンルの枠組みを定めるために、「情報映画」や「有用映画(useful cinema)」と呼ばれるジャンルの映画研究の文献を収集し、研究の枠組みを検討した。次に英米のアイソタイプに影響を受けたと推定される情報アニメーションの資料調査を主にインターネットを使用して行った。その結果、戦間期、戦時中のプロパガンダ・アニメーションに、数は多くはないものの、カナダ、英米の映画で広範囲に用いられていることを確認した。 以上の作業と並行して、本研究の主要対象のひとつであるラーガンの活動の全体像の調査を進めた。主たる資料として、同時代の米国およびカナダの地方新聞や雑誌、報告書などの悉皆調査を行った。その結果、もっとも基本的な知見として、ラーガンの生年月日や略歴などを特定することができた。ついでラーガンのアニメーション制作に至る経路についても調査を行い、米国のニューディールで設立されたエージェンシーのひとつWPAで制作された映画のなかに、ほぼ確実に彼の制作によるものと思われるアニメーションを含む映画を2点発見することができた。また、ラーガンのアニメーションのほとんどが国立カナダ映画制作庁(CNFB)の依頼を受けて制作されたものであることから、NFBアーカイブの協力をえて、約15本程度の作品を確認できた。 以上の研究成果のうち、ラーガンの略歴と彼の制作したアニメーションの概要について日本映像学会西部支部にて研究報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はラーガンについての基礎資料収集の段階と位置づけていた。しかし、新型コロナウィルス流行の拡大に伴い、3月に予定していた米国のペンシルバニア州立歴史資料館での資料調査を延期せざるをえなかったことによるものである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、米国、カナダの関連アーカイブを訪問し、ラーガンの業績の資料収集に務めるとともに、分析を進める。また英国のアイソタイプアーカイブでの資料調査の計画も進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス流行の拡大に伴い、予定していた米国への調査旅行を中止したことによるものであり、次年度に改めて調査実施の計画を立てることで対応する。
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