研究課題/領域番号 |
19K12660
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
伊原 久裕 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (20193633)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アイソタイプ / グラフィックデザイン / アニメーション / 情報アニメーション / フィリップ・ラーガン / デザイン史 |
研究実績の概要 |
本研究はアニメーションを用いた情報デザインである「情報アニメーション」の表現に関する歴史研究の試みとして実施し、今年度はラーガンのアニメーション作品の分析に取り掛かる予定であった。そのために、米国、カナダのアーカイブでの調査を予定していたが、新型コロナウィルス感染流行のため、実施できなかった。そのため、今年度はラーガンがアニメーションに着手する以前のグラフィックデザインの活動に焦点を合わせ、重点的に資料収集、調査を行った。調査は特に近年活発にインターネット上で公開されているニューディール関連の資料を対象とした。その結果、雑誌、書籍などの図版、ポスターなど、資料として約20点収集できた。それらを時系列に分類し、アニメーションに通ずる特徴の抽出を試みた。 ラーガンのグラフィックデザインは、1934年からはじまるローズベルト大統領主導のニューディールの開始とともに始まり、主としてのペンシルバニア州労働産業局が刊行する出版物を主要媒体として実践されており、最初からアイソタイプに強い影響を受けたチャートを多数制作していたが、1940年代からグラフィックデザインは雑誌Fortuneの仕事にほぼ限定されている。この変化がグラフィックからアニメーションへの移行を反映しているとともに、一流雑誌Fortuneによるラーガンの起用それ自体は、ラーガンの仕事が一定の評価を受けていたことを示している。以上の知見をふまえて、グラフィックデザインの特徴を分析、「機械的」「説話的」「演劇的」の3点に要約できることを示し、そうした特徴がアニメーション化を促す要因となったことを示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染流行に伴う旅行制限のため、予定していた米国、カナダでの現地調査を実施できなかったことが大きな要因である。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に現地調査を計画するが、特に原爆を扱ったラーガンのアニメーション作品の関係資料については重要と考えていることから、可能な限り現地調査を実施したい。ただし、年をまたぎ、計画年度内に終えることが難しい可能性があることから慎重に検討する。仮に現地調査が困難な場合、代替策としては、現在ピクトグラムに関する国際的な研究者のネットワークを海外の研究者と構築していることから、現地調査に代えて、そうしたネットワークを使った情報交換をより活発化する方策や、情報共有を目的としてインターネットでのワーキングペーパーとしての公開を検討してゆきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染流行拡大に伴う旅行制限により、予定していたカナダ、米国での現地調査を実施することができなかった。インターネットによる資料収集を代替作として実施した。2021年度に現地調査を計画するが、年をまたぎ、計画年度内に終えることが難しい可能性があることから慎重に検討し、代替策として、現在ピクトグラムに関する国際的な研究者のネットワークを海外の研究者と構築していることから、現地調査に代えて、そうしたネットワークを使った情報交換をより活発化する方策や、情報共有を目的としてインターネット上にホームページを作成し、ワーキングペーパーとしての公開の可能性を検討する。
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