研究課題/領域番号 |
19K12660
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
伊原 久裕 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (20193633)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | pictogram / animation / Isotype / Philip Ragan |
研究実績の概要 |
2021年度は、米国のアーカイブでの調査を実施し、ラーガンのアニメーションの分析にとりかかる予定であった。しかし、新型コロナウィルス感染流行のため実施できなかった。そこでラーガンのアニメーションに関しては国立カナダ映画制作庁(NFB)アーカイブから、継続して協力を得て、それまで確認できなかった作品も含めてまとめてWeb上に公開していただいた。 その結果、ラーガンのNFB作品については、ほぼ全体を把握することができた。この資料と、それまで収集していたグラフィックデザイン資料を付き合わせて、グラフィックデザインの作品のリストならびに、アニメーション作品のリストを作成し、それぞれの業績の特徴について詳細な分析と考察を行った。アイソタイプに影響を受けた情報グラフィックスからピクトグラムを用いたアニメーションへと至る展開がラーガンの業績の特徴であるが、この展開を可能にした媒介要素として、ふたつの要素を想定した。ひとつは経済制度の説話的なダイアグラム表現であり、もうひとつが特徴的なピクトグラムのスタイルである。前者はラーガンがアニメーションを手がけることになった主要動機と考えられる。他方、後者はプロパガンダの必要性に応えるための手立てだったと仮説をたてた。事実、戦後はラーガンは前者の方向に向かい、終戦直後に代表作の「one world or none」を制作した。本作品はドキュメンタリー、ピクトグラムアニメーション、抽象表現的アニメーションなどの異なる映像表現が融合した総合的な作品となっており、その点でアニメーションによる情報デザインの先駆的成果と評価した。以上のように、本研究は、これまでまったく言及のなかったラーガンという創作者の業績に焦点を当てて、アニメーションによる情報デザインの歴史を発掘し、その業績をあきらかにした。 以上の内容を国際会議ISDR2022にて研究発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染流行に伴い、予定していたアメリカでの現地調査を実施できなかったことが大きな理由である。
|
今後の研究の推進方策 |
研究期間を1年延長し、以下の活動を実施する。まず、ピクトグラムとアニメーションに関するWebサイトを構築し、これまでの資料と論文をオープンする。これにより広く研究テーマを発信し、関連情報を得る情報プラットフォームとする。また、収集した資料を基礎として、報告書の作成を計画することとする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染流行を原因として、予定していた海外調査を実施できなかった。2022年度は、情報プラットフォームとなるWebサイトの構築と資料の公開、ならびに報告書作成にあてる計画である。
|