研究課題/領域番号 |
19K12661
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研究機関 | 公立はこだて未来大学 |
研究代表者 |
安井 重哉 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 教授 (80633908)
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研究分担者 |
伊藤 精英 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 教授 (90325895)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 触覚サイン / 触知記号 / ハプティックデザイン / ユニバーサルデザイン |
研究実績の概要 |
2021年度は、2つの柱を立て研究に取り組んできた。1つは、「異方性触感による記号ならでは、の特性に関する生理学的な探求」であり、もう1つは、「DiGITSの実用化に向けた多面的な取り組み」である。 前者については、今年度、コロナ禍の影響で予定していた本実験の実施には至らなかったが、予備実験として、Polhemus G4センサを用いた測定手法の確立に取り組んだ。これはDiGITSの構造のうち、フラップの特性とフラップ間(ピッチ)に着目し、フラップの弾性とピッチが人の感性に及ぼす効果を明らかにするものである。そのことにより、DiGITSに触れるという触運動と、それにより惹起される心地よさとの関係を見出すことで、目的に応じてDiGITSの仕様を変更することの妥当性を見出すことができる。 もう1つの柱である「DiGITSの実用化に向けた多面的な取り組み」では2つのアプローチを取って研究を進めた。 1つ目は、上記の測定手法に用いるためのテストベッド制作である。2021年度の成果として、Polhemus G4センサの測定に影響しない素材の使用や、モジュール化を進めることで、さまざまなパラメータのDiGITSを比較検証することができるようにした。 2つ目は、DiGITSを構成する方式の拡充である。これまでの可倒フラップ方式DiGITSには、フラップに衝撃を逃す構造がないため、操作手を逆目方向に勢いよく動かした場合に強い衝撃がかかり、手に怪我を負うことやDiGITSに破損の生じることが課題と考えられていた。そこでこの課題を解決することを目的に「順逆独立遊動フラップ型DiGITS」を考案した。 なお、これまでに制作したDiGITSをまとめて、国際的デザイン賞であるIAUD国際デザイン賞2021に応募し銀賞を受賞した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」で述べた二つの柱のうち、「DiGITSの実用化に向けた多面的な取り組み」については、特定の用途への応用を想定したプロトタイピングとして、触覚誘導標識用DiGITSプロトタイプの開発を推進してきている。また、DiGITSを構成する方式の拡充としては、「順逆独立遊動フラップ型DiGITS」を考案し、概ね順調に研究を推進することができたと言える。 しかしながら、もう一方の柱である「異方性触感による記号ならでは、の特性に関する生理学的な探求」に関する取り組みについては、本実験の実施に至っていないが、予備実験を完了して実験手法や手続については目処が立った状態である。本実験については、本研究課題が、実体物への接触によって情報を読み取ることを特徴としているため、コロナ禍での被験者実験実施の目処が立てられないという、外的要因によるものである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、今後も引き続き「異方性触感による記号ならでは、の特性に関する生理学的な探求」と「DiGITSの実用化に向けた多面的な取り組み」を2本の柱として研究を推進していく。 前者の柱については実験が基礎になるため、コロナ禍という外的要因に研究の進捗が左右されることが懸念される。今年度は特に、社会の状況に応じて研究計画を都度見直しながら、柔軟な対応をとっていく必要があると考える。 後者の柱については、利用空間を想定した利用者との認知的な相互作用の検証を進めながら、触覚誘導標識用DiGITSプロトタイプの実用性を高める改良設計を発展させていく。また、応用可能性を高めるために、新たな実装方式も引き続き考案していく。そして、研究成果の社会への敷衍のために、学会発表とともに展示会やデザイン賞への応募を続けていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、被験者実験の実施が計画より遅れているため次年度使用額が発生した。2022年度は計画的に作業を進め、当初計画を達成する。
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