2022年度は、DiGITSの実用性を高める知見を得るためのケーススタディとして緊急時の経路誘導という具体的な目的を設定し、プロトタイピングを実施した。これは、従来提案方式を元に、耐久性と経路誘導性の向上を目指していくつかの改良ポイントを盛り込んだものである。道路トンネルの側壁に連続的に設置することを想定しており、停電等の暗闇や火災煙で視覚情報が得られない状況でも、避難者の視覚特性に関わらず、触探索行動を利用して非常口の方向などを知らせることを目的とした。改良のポイントは以下の3点である。 1)引き込み式ストッパー配置部を挟むように、上下のエリアに「土手」を設ける。これによりたどるべき道筋の明示化や、堅牢性および触認性の向上を図る。 2)手指のふれる部分を軟質の発泡性素材(EVA)のシートで覆い、そのシートが、可動部でヒンジの機能を兼用する。これによって安全性と耐久性の向上を図る 3)従来提案方式のヒンジ部分を改良し、EVAシートによる「ひれ」を設ける。これにより、触探索時の順逆の判別性を高める。 完成したプロトタイプは、展示イベント「第12回おおた研究開発フェア」を通してその妥当性を社会に問うた。来場者の反応として、プロトタイプやDiGITSのコンセプトの合理性について、否定的なコメントはなかった。多くのブース来場者はDiGITSが何であるかを知らないが、机上に置かれた本プロトタイプを含む複数のDiGITSを触ってもらった後に説明をすると、納得に至るようであった。また、上記の改良ポイントについても、概ね正しく機能した。しかしながら、研究者らの社会実装に向けた進捗の遅さを叱咤する声もあった。
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