研究課題/領域番号 |
19K12665
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研究機関 | 文教大学 |
研究代表者 |
川合 康央 文教大学, 情報学部, 教授 (80348200)
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研究分担者 |
池田 岳史 福井工業大学, 環境情報学部, 教授 (00340026)
門屋 博 相模女子大学, 学芸学部, 教授 (80510635)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ゲームエンジン / オープンデータ / シミュレーション / 地理情報システム / 可視化 / 都市景観 / 都市防災 / 都市交通 |
研究実績の概要 |
本研究では,汎用的な都市空間基盤シミュレーションシステムをプラットフォームとし,種々のデータセットを加えることで,様々な用途に応じた都市空間シミュレーションシステムの開発を行うものである.本システムは,独自の専用システムではなく,地理情報などのオープンデータとゲームエンジンやCAD,CG,GIS等のオープンな開発環境を用いることによって,安価で高品質なシステムの開発を行うこととした. 令和二年度は,基盤となるシステムをもとに,様々なデータセットを用いた各種都市空間シミュレーションシステムとして,都市景観シミュレーションシステム,歴史的文化景観シミュレーションシステム,災害避難行動シミュレーションシステム,都市交通シミュレーションシステムの開発を行った.これらは,国土地理院が提供している基盤地図情報をもとに,大規模な3次元都市モデルを生成し,ゲームエンジン上に配置した基盤システムに対して,各種空間構成要素モデルや,車両や歩行者などのエージェントなどを配置したものである.さらに注視行動や避難行動,動作ログデータの取得など様々な機能を組み込み,各種シミュレーションシステムの用途に応じたシステムとして開発を行った. さらに,本システムを発展させるための取り組みとして,スマートフォンの位置情報を組み合わせ実空間と連動するナビゲーションシステム,プロジェクションマッピングを用いた実モデルへの立体表示システム,拡張現実による実空間への仮想オブジェクトの提示と測定,音声認識によるキャラクタ操作システムの開発,大規模オープンデータの可視化,テキストマイニングによる都市情報の分析などを行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
令和二年度は,都市空間シミュレーションシステムとして,都市景観シミュレーションシステム,歴史的文化景観シミュレーションシステム,災害避難行動シミュレーションシステム,都市複合交通シミュレーションシステムの開発を行った. 都市景観シミュレーションシステムとして,景観条例に基づくまちづくりが行われている地区を対象として,システムの構築を行った.空間構成要素の分析から,商業サインや植栽などとともに,歩行者や車両など動的な要素が注視を促していることが明らかとなった.そこで,これら動的な空間構成要素を再現するとともに,ゲームエンジンを用いることで可能となる表現として,夜間時の都市景観についても検討を行うこととした.結果,同じ空間構成要素を持った街並みであっても,時間帯やシークエンスの方向によって異なる印象を与えることを明らかにした. 歴史的文化景観シミュレーションシステムとして,古文書や古地図を基にしたシステムの開発を行った.昼夜など時系列の再現とともに,太陽光の位置や植栽の変化による季節の再現,パーティクルによる天候の再現を行った.さらに,オブジェクトのエッジ抽出を用いた浮世絵風レンダリングシステムの開発を行った.ジオラマに比してコンテンツの更新が可能であるとともに,仮想現実酔いなどの課題が明らかとなった. 災害避難行動シミュレーションシステムとして,相模湾沿岸を対象とした津波避難行動を再現するシステムの開発と評価を行った.結果,低地が続く河川沿いの箇所においては,内陸部においても大規模な被害が見られたことから,避難経路上にも適切な垂直避難場所の選定が必要であることが明らかとなった. 都市複合交通シミュレーションシステムとしては,国土地理院のオープンデータを基にして,実在する交差点を対象とした詳細な道路モデルを作成し,自動車及び自転車の運転が可能なシステムの開発を行った.
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今後の研究の推進方策 |
基盤となるシミュレーションシステムに各種オープンデータを取り込むこととする.現在公開されている様々なオープンデータをGIS上に読み込み,モデルの3次元化とデータの軽量化を行ってゲームエンジンに取り込むことによって,様々な用途に用いることが可能な基盤システムを拡張していく. 国土交通省によって現在整備が進められている都市モデルのオープンデータを用い,各種シミュレーションの詳細化を行う.都市景観シミュレーションでは,サウンドスケープとして,都市の音環境を立体的に取得し,これらを3次元大規模モデル上に音場として配置することによって,仮想都市空間における聴覚情報を再現する.都市災害シミュレーションでは,3次元都市モデルと浸水シミュレーションと組み合わせ,河川域の大規模な水害シミュレーションと垂直避難行動シミュレーションを行う.また,都市交通シミュレーションとして,震度カメラによる点群データを用いた道路環境の詳細モデルと運転シミュレーションの開発を行う.さらに,都市人流の可視化として,ライブカメラによる画像認識とSNSの経時的テキスト分析によるリアルタイムビジュアライゼーションシステムの開発を行う.また,環境省による植生GISデータを用い,国立公園などの大規模環境のモニタリングシステムを構築する.ドローンによる画像撮影と深度センサなどによって取得されたデータを用い,フォトグラメトリと点群データによる植生状況の判定を行う. 一方,現在の社会情勢から,大規模なフィールドワークが難しい状況が継続すると予想される.特に実空間を対象としたモデルに関しては,近隣の対象地区へと変更を検討するとともに,各種オープンデータを精査し,新たに使用可能なデータセットを増やしていくこととする.
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次年度使用額が生じた理由 |
学会等での成果発表に際して,そのほとんどがオンラインによる実施であったため,旅費等に残額が生じた.これらは主として次年度の成果発表に用いることとする.
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