研究課題/領域番号 |
19K12667
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研究機関 | 明星大学 |
研究代表者 |
吉岡 聖美 明星大学, デザイン学部, 准教授 (80620682)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | インタラクション / リハビリテーション / 身体機能 / 認知機能 / 嚥下機能 / アートプログラム / 思考トレーニング / 介護予防 |
研究実績の概要 |
通所介護事業所のデイケアサービスや療養型病院におけるリハビリテーションについて,身体機能や認知機能に関わる訓練,特に複数課題を実施する認知症予防のためのトレーニングに関する現状調査および課題を把握するための視察調査を実施し,医療スタッフとの意見交換を行った。 通所介護事業所のデイケアサービスにおいて,インタラクティブな画像の変化によって立ち座りのリハビリテーション動作を促すVRを活用したプログラムを3カ月間実践し,プログラムの実行可能性および心理的効果や身体機能に関わる効果について評価した。その結果,認知機能が低下した高齢者においてもVRを活用したプログラムによる長期間のリハビリテーションが実行可能であることを確認した。また,プログラムを用いたリハビリテーション後は,「活性度」「快適度」「覚醒度」が大きくなる傾向を確認した。加えて,継続して取り組むことによって,リハビリテーションに対する「頑張り度」および「満足度」の評価が段々大きくなり,インタラクティブに画像が変化するプログラムを楽しく感じて興味を持ち,リハビリテーションに対するモチベーションに繋がると考えられる結果が得られた。身体動作に対応してインタラクティブに画像が変化するプログラムが,介護予防のためのプログラムとして有効であることが示された。これらの研究結果に基づき,複数課題を実行する「トレーニングアート」のプログラムでは,インタラクティブに画像が変化するデザイン要素を中心とした設計を行う。 プログラムに付加する思考課題に関連するデザイン要素として,メロディに関わる基礎実験を実施し,休符・長音・音階・リズムの特徴が異なる4種のメロディを聴いた場合,繰り返し聞くことでリズムが複雑なメロディが印象に残る結果が得られた。今後,複数課題のデザイン要素として,メロディに関わる効果について検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
身体動作と思考トレーニングの要素を取り入れることによって,心身機能を活性化するプログラム「トレーニングアート」を開発する。そのための現状調査として,通所介護事業所のデイケアサービスや療養型病院におけるリハビリテーションについて,身体機能や認知機能に関わる訓練,特に複数課題を実施する認知症予防のためのトレーニングに関する視察調査を行って課題を確認した。また,通所介護事業所のデイケアサービスにおいて,インタラクティブな画像の変化によって立ち座りの動作を促すプログラムを用いたリハビリテーションを実践して評価し,認知機能が低下した高齢者においてもVRを活用したプログラムによる長期間のリハビリテーションが実行可能であることを確認した。また,心理評価において,身体動作に対応してインタラクティブに画像が変化するプログラムがリハビリテーションに対するモチベーションを維持し,介護予防のためのプログラムとして有効であることを確認した。これにより,複数課題を実行する「トレーニングアート」のプログラムでは,インタラクティブに画像が変化するデザイン要素を中心とした設計を行うこととする。また,思考課題に関連するデザイン要素として,メロディに関わる基礎実験を進めており,「トレーニングアート」を開発するための研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
心身機能を活性化する「トレーニングアート」の概念を確立するため,要介護に陥るリスクの高い高齢者を対象にした「二次予防事業」,および,活動的な状態にある高齢者が生きがいをもって地域で自立した生活を送ることを支援する「一次予防事業」における支援プログラムについて,リハビリテーションに関わる取り組みの現状調査を実施する。また,我が国における死亡率の第3位が肺炎であり,肺炎患者の約7割が75歳以上の高齢者,その7割以上が誤嚥性肺炎である現状を踏まえて,「トレーニングアート」における身体機能に関わるリハビリテーションでは,嚥下機能の維持向上のための訓練も合わせて研究対象とし,現状調査を実施する。 運動器の機能,嚥下機能,および,認知機能に働きかける「トレーニングアート」のデザイン要素を選定するため,2019年度に引き続き,「トレーニングアート」に取り入れる身体動作,および,思考トレーニングに関わるデザイン要素について,動作を誘導したり,モチベーションや気分の改善に関係するアート・デザイン要素(色,形,素材,音など)を抽出するための基礎実験をする。 抽出したアート・デザイン要素を基に,身体動作と思考トレーニングの要素を取り入れた「トレーニングアートアート」のプログラムを設計してプロトタイプを制作する。その後,プロトタイプの評価を実施して予備実験のためのプログラム・デバイスの開発設計を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染拡大防止策のため2020年3月に予定していた学会が中止となり,学会参加のための旅費および発表に関わるその他の支出がなくなったことから次年度使用額が生じた。次年度使用額については,2020年度に開催される関連学会に改めてエントリーし,研究発表を行う。
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