研究課題/領域番号 |
19K12668
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研究機関 | フェリス女学院大学 |
研究代表者 |
近藤 存志 フェリス女学院大学, 文学部, 教授 (00323288)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ニコラウス・ぺヴスナー / ゲニウス・ロキ / 寛容 / ジョン・ロック / 機能主義 / エルサレム会議都市計画小委員会 |
研究実績の概要 |
エルサレムにおける一次資料の調査が引き続き実施できない中で、2021年度はエルサレム会議都市計画小委員会の委員長を務めたニコラウス・ペヴスナーが残したエルサレム会議関連資料を主たる手掛かりに考察を行い、成果の発表を行った。 ペヴスナーは、エルサレム会議都市計画小委員会の議論において、「寛容」の精神が十分に発揮されなかったことを残念に思う気持ちを吐露したことがあった。同小委員会に名を連ねた人びとの主張は、多かれ少なかれ独善的な性格を帯び、時に1970年当時の現実社会に照らして空論とも言えるものであった。一方、機能主義者であったぺヴスナーは、エルサレムの近代化計画においては、そうした空論を排除し、現代人の現実的必要に応える「寛容」な視点が必要であると認識していたようである。 2021年度は、このペヴスナーの「寛容」に関する理解に特に焦点を当てることにした。主として注目したのは、ペヴスナーの「ゲニウス・ロキ」に関する論、「それぞれの場合をそれぞれのメリットにもとづいて」判断する「人間行動の基本原理」をめぐる論、そしてロックの『寛容に関する書簡』に関するぺヴスナーの理解である。ロックの寛容論は、地上の現世的な生を快適なものにするために人間が保持する「自由」に言及することで、「それぞれの場合をそれぞれのメリットにもとづいて」判断する精神と態度の発露となり、この地上の生を快適なものとするために「便益をもたらす外的なもの」が必要であると指摘したことで、機能主義的デザインの源流ともなった。「寛容」の精神は、現実生活における利便性、そして現世的な生を快適なものにするために人間が保持する「自由」と結びつくことで、ぺヴスナーにとっては都市(エルサレム)の近代化計画を考えるうえで軽視し難い概念になったと考えられる。 2021年度の研究成果発表は、2編の論文と2件の国際会議発表によって行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度も、コロナウイルスのパンデミックによって、引き続き水際対策(帰国後の自宅隔離等)が実施されており、限られた期間内に海外での現地・一次資料調査を行うことが困難な状況が続いた。本研究課題の遂行に本来必要不可欠なエルサレムでの一次資料調査が実施できていないことから、本研究の進捗状況には大幅な遅れが生じている。 一方、成果発表については、コロナ禍を受けて対面での開催が延期されていた国際会議が相次いでオンライン形式での開催となったことから、2件の研究発表を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に引き続き、本研究課題が掲げた①「エルサレム会議とは何であったか?」、②「国際的枠組みにおいてデザインを議論したエルサレム会議の意義とその成果は何であったか?」、③「エルサレム会議の提言とその現代的意義は?」の3つの「核心をなす問い」に焦点を当てながら、特に「エルサレム会議の提言とその現代的意義」に関する考察に注力したい。 海外での調査が可能な場合、当初の研究計画に沿って、エルサレム(イスラエル博物館付属図書館、エルサレム市公文書館他)での資料収集および一次資料の撮影を行う計画である。 また、2021年度に注目した一次資料(米国ゲッティ研究所が所蔵するエルサレム会議都市計画小委員会委員長ニコラウス・ペヴスナーが残したエルサレム会議関連資料)について、未収集のものを入手したい。現地ロサンゼルスでの一次資料の検討・収集が困難な場合、ゲッティ研究所の海外資料収集サポート制度(現地の研究支援スタッフを雇用し、一次資料の収集・撮影を行う研究支援制度)の活用も視野に入れている。 こうした計画と併行して、「エルサレム会議の提言とその現代的意義」について、1960年代から1970年代にかけて北米・欧州(エルサレム会議都市計画小委員会の構成メンバーの多くが北米・欧州出身であったため)の建築・都市計画系専門誌に発表された大都市の近代化をめぐる提言・論評との比較を通して、考察する予定である。現地での一次資料の検討が困難な状況が継続する可能性が高いため、こうしたエルサレム会議創設期に発表された諸論に注目することで、エルサレム会議における議論と提言が当時有していた独自性と現代的意義について考えていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスのパンデミックおよび海外渡航後必要となる隔離により、エルサレムの諸研究機関での資料調査は実施することができなかった。このことが、次年度使用が生じることになった主たる理由である。一方、研究成果の発表については、予定されていた2件の国際会議がオンライン開催となったことで無事実施することができたが、最終年度に行う予定であった海外での発表はできておらず、このことも次年度使用を生じさせる結果となった。 コロナウイルスのパンデミックの影響により、2022年度も、海外での一次資料の収集、調査を実施することは困難になると予想される。こうしたことから2022年度は、本研究課題の「核心をなす問い」について、二次資料・文献を手掛かりに検討する方法へとアプローチを大幅に見直し、積極的な文献資料の追加収集に努める計画である。また、一次資料の画像収集とオンラインによる成果発表の環境を整備する計画である。こうした調査、発表の手段の変更にともなう関連経費を次年度に使用予定である。
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