研究課題/領域番号 |
19K12671
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研究機関 | 神戸芸術工科大学 |
研究代表者 |
ばんば まさえ 神戸芸術工科大学, 芸術工学部, 教授 (00249202)
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研究分担者 |
渡邉 操 神戸芸術工科大学, 芸術工学部, 助教 (00567844)
曽和 英子 神戸芸術工科大学, 附置研究所, 研究員 (80537134)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 和棉 / 糸紡ぎ / 染織 / ワークショップ / 伝統工芸 |
研究実績の概要 |
大島在来の和棉の種を入手し、学内の施設を利用して春から栽培を行った。秋には十分な量の綿花が収穫できたため、それらを用いて学生向け糸紡ぎワークショップを実施した。栽培の方法に関しては千葉県鴨川市の和棉栽培農家を訪問して聞き取り調査を行い、参考にした。ここでは綿花の加工方法、日本における和棉の歴史、現在の生産の現状についても詳しい内容を知ることができた。国内で販売されている糸紡ぎ道具(綿繰り機、綿弓、紡ぎ車)とインドの紡ぎ車の使用方法を学び、実際に綿を加工して糸を紡いで手作業の工程を体験することにより道具それぞれの役割を理解することができた。また、織の作業には細くて均一に紡がれた糸が必要だが、製作には熟練が要ることがわかった。綿の加工道具の調査では古来より各地で使用されてきた糸紡ぎの道具を博物館で調査し、それらを参考にペットボトルなどの身近な材料を用いて作る糸車を考案した。リサイクル材料を用いた安価でワークショップ等で気軽に使うことができる道具として千葉県浦安市で開催された第13回アジアデザイン文化学会において「身近な材料を用いた紡績道具の提案」をテーマに研究発表した。日本各地で作られてきた和棉布の調査は沖縄県で実施した。八重山諸島の布について、石垣島と竹富島のミンサー織工房を訪ねて歴史と技法、文様に込められた意味などの調査を行った。また、兵庫県西脇市のすくも生産農家を訪問して藍の品種、栽培方法、すくもの作り方、藍染について学び、藍染の実践としてすくもを用いた藍建て実験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度の課題とした和棉の栽培と加工の実践、ワークショップで使用できる道具の考案、日本で用いられてきた綿織物の調査は予定通り実施できた。しかし、藍栽培は失敗したため、今年度は栽培方法を再調査して確実に自家栽培の葉を収穫したい。すくもからの藍建てはすでに様々な方法があるが、本研究では可能なかぎり人工的な添加物を使わない方法を実践していきたいと考えている。藍の環境を整え、先行研究を再調査しながら工夫を重ねていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
自家栽培した和棉から糸へ加工する技術は修得できたため、次の工程である布へ織り上げる作業の中で、和棉の特性と風合いについて考察を進めていきたい。また、和棉を広めるためには気軽に綿を加工できる道具が必要である。身近にある材料を用いた紡績と織の道具については引き続き研究を重ねる予定である。しかしながら、ワークショップや授業による教育実践については、前期は新型コロナウイルスの影響で実施が難しい。後期以降に工夫をしながら実施を模索したい。また、今年度予定している日本の綿織物、和棉振興団体についての調査も後期に情勢が改善されてから実施の予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
まだ購入できていない紡績用具があることと、国内の和棉文化の調査に未実施分があるために残額が生じている。和棉文化の調査に関しては次年度に計画している分と合わせて実施する予定である。前年度に引き続き行う紡績の研究に加えて藍染の環境整備、手織物の技術と道具の研究も計画している。
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