研究課題/領域番号 |
19K12684
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
加藤 大香士 名古屋市立大学, 大学院芸術工学研究科, 准教授 (90362285)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 予防医学 / 上腹部柔軟度 / ヘルスケア / プロダクトデザイン |
研究実績の概要 |
「上腹部の柔軟性を主眼とした人体のしくみ」を客観的に解明し、上腹部柔軟度を指標としたセルフ・ヘルスケアのためのあたらしい計測・解析システムとデバイスを開発することを目的とする。 1)上腹部柔軟度の客観評価手法の開発:研究協力機関(石垣ROB医療研究所)、ならびに名古屋市立大学にて、熟練施術者による上腹部柔軟度の計測を継続して行い、上腹部柔軟度の計測装置に関して基盤ができた。また継続的なデータの収集と蓄積とを可能にした。被験者個人の身体特性を考慮した解析を行うと同時に、複数の被験者のデータ間に見いだせる共通項、相違点の検討等を、客観的視点に基づいて進めてきた。上腹部柔軟度を位置データと力データとに分解して同時計測し、様々な被験者の上腹部柔軟度のデータ時系列から、学術的、臨床的双方に意義のある知見の導出につき検討を行った。不随意である自律神経系への刺激効果により、上腹部の活動量と呼吸との関係性を調べる実験を行った結果、呼吸数の優位な減少と、1呼吸当りの上腹部腹壁の活動量の増加傾向とが確認された。 2)ロボット機構を用いた上腹部柔軟度の客観評価:上腹部の柔軟性が、自律神経系と連動する度合いを検証するために、名古屋市立大学にてボランティアに対し実験を行った。大学院生の協力を得てデータ収集と解析し、客観的な評価手法を開発してきた。 3)上腹部の触診用セルフ・ヘルスケア・デバイスのデザイン研究開発:健康診断や在宅での簡便な使用を想定した、上腹部の触診センサデバイスをデザイン開発した。高度なデザイン提案性と、素材レベルからの要素研究開発とが必要になってくるため、3次元CADや3次元造形を用い、試作検討、試用等のデザイン開発手法をとった。研究代表者の専門性と、芸術工学研究科のリソースとを駆使して推進中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人体力学や生理学的な解釈により、上腹部柔軟性と健康状態との相関を次第に説明できてきた。具体的には、自律神経系に有意な影響を及ぼすことがわかっている眼球心臓反射(アシュネル反射)の前後で上腹部の柔軟度を調べた結果、有意に変化したことを確認した。この成果は現在、論文執筆中である。 また、上腹部の柔軟性を自身で容易に確かめ、また客観的にも把握できるようなヘルスケアデバイスについてもデザイン研究開発を行ってきた。基本的なデバイスデザイン要件を抽出することができた。さらに、小型のロボットアームを用いた上腹部の硬さ計測システムを構築し、データ収集し、解析を進めている。その結果、上腹部腹壁の運動度に有意な変化をみとめた。本研究では、これらの成果を統合し、上腹部柔軟性の生理的機序を解明、実証するフェーズを通して、セルフ・ヘルスケア・デバイスとしての上腹部柔軟度モニタリングシステムを新規に開発することを目標とする。
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今後の研究の推進方策 |
1)ロボット機構を用いた上腹部柔軟度の客観評価(つづき):上腹部の柔軟性が、自律神経系と連動する度合いを検証するために、名古屋市立大学にてさらにボランティアを募り実験を行う。数十名の学生ボランティアを対象とする。大学院生の協力を得てデータ収集と解析し、測定手法を確立する。 2)上腹部の触診用セルフ・ヘルスケア・デバイスのデザイン研究開発(つづき):健康診断や在宅での簡便な使用を想定した腹部の触診センサデバイスをデザイン開発する。高度なデザイン提案性と、素材レベルからの要素研究開発とが必要になってくるため、3次元CADや3次元造形に加え、切削装置を駆使した試作検討、内部機構の実装テスト等のさらなる複合的なデザイン開発を行う。 3)個人の上腹部柔軟度に基づく新しい健康管理システムのデザイン:個人それぞれによって、また日によっても変化する上腹部柔軟度のカスタムフィット化をめざす。すなわち、個人の人体特性に合った健康管理指標として上腹部柔軟度を活用できるように、機械学習を応用した個人用アルゴリズムの自動生成を試みる。各人の体調に照らし合わせて適切にフィードバックができるインテリジェンスを有する操作インタフェースを、機械学習やMATLAB等のプログラミング援用ソフトウェアを活用して開発システムに実装していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度での試作開発用材料費の支出用に、今年度の使用額を節約し、次年度に繰越して使用できるようにするため。研究計画調書に記した研究経費よりも、実際の交付決定額が大幅に減額された関係で、次年度の材料費に充てる経費が逼迫することを見越しての処置である。
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