ピクトグラムとは「絵文字」とも呼ばれ、意味するものの具体的な形状やイメージを用いて、その意味概念を理解させる視覚サインの一つである。このよく見慣れたピクトグラムを触知化(凸化)し、既存の点字を基本とする触覚情報設備や音声情報設備と併設して目的地を示したり、そこに至るまでの道々に設置したりすることで、点字を理解できないユーザーへの快適な移動情報の伝達を容易にするものと考えられる。本研究では、習得が困難である点字等の手指サイズに対して比較的小さい触知ツールに代わる「触知ピクトグラム」の利用可能性を検討する。具体的には、(1)注意を惹きやすい形態特性をボトムアップ的に評価可能な計算論的モデル「顕著性マップ(Saliency Map)」の適用と、(2)意図や選好等の経験の蓄積によって無意識的に駆動されるトップダウン的に評価可能な視線計測の評価、そして、(3)視覚と触覚モダリティ間のミスマッチ、いわゆる「錯触」の特徴と程度の評価をもとに、(4)視覚情報のみならず触覚情報をも提供可能で、触知しやすく理解しやすいユニバーサル・ピクトグラムを制作・開発する。 最終年度は、引き続きそれぞれにおける視線計測及び視覚と触覚モダリティ間のミスマッチ(錯触)の補正と触覚と視覚における誤差を評価する被験者実験を継続したが、実験予定時期のコロナ状況に伴い計画どおりに被験者実験数が思うように捗らなかった。現在までの被験者実験で取り終えている全ての視線計測及び視覚と触覚モダリティ間のミスマッチ(錯触)の補正と触覚と視覚における誤差のデータの解析を進め視覚的顕著性と錯触の関連性を導き出すことができた。
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