研究課題/領域番号 |
19K12691
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研究機関 | 大阪樟蔭女子大学 |
研究代表者 |
山崎 晃男 大阪樟蔭女子大学, 学芸学部, 教授 (40243133)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | BGMへの態度 / 職場でのBGM / ながら勉強 / 音への敏感性 / インターネット調査 |
研究実績の概要 |
当該年度は、COVID-19の感染拡大のために、閉鎖空間である実験室内での実験を実施することができなかった。そのため、昨年度の研究によって得られた成果である、BGMのタイプよりも各実験参加者のBGMへの評価の高低が課題成績および主観的な気分状態に及ぼす影響が大きいという知見を踏まえて、質問紙調査によってBGMに対する態度測定のための心理尺度作成に着手した。前年度の研究によって、実験参加者のBGMへの評価が、BGMとして用いられた曲に対する個別的な評価ではなく、BGMに対する全般的な態度に基づいている可能性も示唆されたため、実験実施にあたっては用いたBGMへの評価とともにBGMへの全般的態度を測定しておく必要があるが、そうした測定のための既存の心理尺度が存在しないためである。 職場や店舗等で他者の選定によって流されるBGMに対する態度、ながら勉強など自分で流すBGMへの態度、さらに音一般に対する過敏性等を測定するための質問紙を作成し、インターネットを利用した調査を実施した。質問紙には97名が回答し、(1)一般的な音に対して過敏な者ほど他者が選定するBGMに対して否定的である、(2)気分に合わせた音楽聴取をする者ほど職場でのBGMに対して好意的かつ自分でもながら勉強的なBGM利用を行う、(3)ながら勉強的なBGM利用は一般的な音への敏感性が低いまたは高い者で多く中くらいの者で最も低くなる、といった結果が得られた。これらは、BGMに対する評価や利用形態に全般的な音楽聴取態度や音一般に対する敏感性が関わっていることを示すものであり、BGMの効果に対して個人特性が大きく影響することを示唆している。 当該年度末には、インターネットを用いた第2回目の質問紙調査を実施し、320名から回答を得た。その結果については、現在、集計、分析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度は、当初の計画では、BGMが認知課題遂行成績およびストレスレベルに及ぼす影響について、心拍数と唾液中コルチゾール濃度という客観的な生理指標を導入した実験によって検討する予定であった。しかし、年間を通じたCOVID-19の流行のために、閉鎖空間である実験室内での実験を実施することができなかった。そのため、インターネットを利用した質問紙調査を実施して、音楽聴取に対する態度および音一般に対する敏感性がBGMの評価や利用形態に影響しているという知見を得た。このことは、前年度の研究によって示唆された、BGMがもたらす課題成績や気分への効果とBGMに対する個人的評価の間に強い関係があるという結果を支持するものである。また、当該年度の研究結果は、BGMの効果の研究に必要とされる、BGMに対する態度測定のための一般化された心理尺度作成に向けた第一歩となるものである。以上、計画された実験が実施できなかったことと計画外の質問紙調査による成果とを勘案して、進捗状況を区分(3)と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まず2021年度前半において、2020年度末に実施した第2回の質問紙調査の結果を分析し、BGMに対する態度を測定するための質問項目をより洗練されたものとする。2021年度の後半には、作成したBGMに対する態度尺度も用いつつ、BGMが認知課題遂行成績および生理指標によって測定される客観的なストレスレベルに及ぼす影響についての実験室実験を実施し、BGMの効果と実験参加者のBGMへの態度・BGMへの評価・性格特性との関係を明らかにする。この研究を通じて、BGMが課題遂行成績および客観的なストレスレベルに肯定的あるいは否定的効果を及ぼす個人的要因についての知見を得、2022年度の研究へとつなげる。 以上の計画は、2021年度後半にはCOVID-19の感染状況がある程度落ち着き、実験室内での実験が実施できるようになっていることを想定している。万が一、2021年度後半においても実験室実験が実施できない状況である場合には、前半に引き続き質問紙調査を研究の中心において、BGMに対する態度測定尺度をより一般的な心理尺度として完成させる方向で研究を行うこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主たる理由は、COVID-19の世界的流行によって、出席を予定していた国際学会(ICP2020)が次年度に延期となったために渡航費・参加費の支出がなくなったことと、実験室実験が実施できず、収集予定であった生理検体の分析費用の支出がなくなったことによる。 使用計画としては、1年延期となった国際学会への参加費用と実施できなかった実験室実験のための費用を支出し、次年度実施予定の実験に関してはそれに要する費用も含めてさらにその次の年度に繰り越すこととし、費用的なバランスをとる。
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