研究課題
2022年度も,普遍的な「美しさ」の原理を目指して,色彩と形状の2つの側面からのアプローチにより,人の感性に影響する現象について探求した。とくに,最終年度であるので,成果の発表を重点的に行った。2022年8,9月に欧州で開かれた,(1)視覚科学芸術研究集会(VSAC),(2)欧州視覚認識研究集会(ECVP),(3)感性工学・情動研究集会(KEER)の各研究集会に順に参加し,研究発表を行った。(1)では,色彩の類似度の動的変化と認知される調和性の変化の関係について発表した。2つの色見本の類似度が明度・彩度について変化していくとき,それにともなう調和感の変化は類似度の変化に必ずしも追従しないことを示した。(2)では,図形の形状が示す方向と動作の方向の関係が認知におよぼす影響について発表した。画面上を上向き/下向きの三角形が上向き/下向きに動き,実験協力者がそれをマウスカーソルで捕捉する実験を行った結果,三角形の向きと動作方向が一致している場合は一致しない場合よりも反応しやすいことを示した。(3)では,発達段階と色彩感覚について発表した。小学校児童,中学校生徒,大学学生に対して,タブレットを使った塗り絵課題を実施し,発達段階にしたがう色彩感覚の広がりや個性の発達を明らかにした。また,台湾がホストとなってオンラインで開催されたアジア色彩研究集会(ACA)では,日本と中国で,色を表す同一の漢字から想起される色彩がどのように異なるかについて発表した。さらに,応用研究として,パッケージの色彩と高級感の関係について,日本色彩学会関西支部大会で発表した。研究期間全体を通じて,色彩・形状どちらにも共通する普遍的な「調和感」についての知見を,感性に関する各種の現象を通じて蓄積した。
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