研究課題/領域番号 |
19K12696
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
池内 淳 筑波大学, 図書館情報メディア系, 准教授 (80338607)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 図書館評価 / 費用便益分析 |
研究実績の概要 |
費用便益分析は、公共図書館設置のための政策的意思決定に資する有効なツールであり、国内外において一定の研究蓄積があると言えるものの、図書館の現場における実施事例は必ずしも多いとはいえない。これは図書館を対象とした方法論に関する理論的検討が十分に行われていないこと、ならびに、調査コストの問題が指摘される。そこで本研究では、(1)同一の図書館を対象として、複数の便益測定手法を同時に適用することで、各々の手法間の比較を行うとともに、(2)同一の方法に則って、さまざまに異なる図書館を対象とした費用便益分析を実施することで、図書館の特性によって便益評価がどのように変化するのかを比較する。さらに、(3)全国規模のウェブアンケートを実施して、非利用者を含めた市民全体が、図書館に対してどのような価値を認識しているのかを把握する。以上のような研究を通じて、(4)図書館を対象とした費用便益分析に関する理論的検討を行って標準的な手法を構築し、図書館の現場において容易に適用可能となるよう、評価のためのガイドラインを作成することを目的としている。今年度は、費用便益分析によって測定される公共図書館の需要の性質について検討することを目的として、図書館の設置や廃止、もしくは、サービス水準の多寡が、他の図書館や書店の売り上げ等にどのように影響するのかについて分析を行った。また、新型コロナウイルス感染症下においても効果的なサービスの一つとして提供館の増加している電子書籍貸出サービスの経済価値を測定するために、ウェブアンケート調査を計画・実施し、次年度にその成果を公表することを予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の後半に計画・実施した電子書籍貸出サービスの経済価値に関するウェブアンケート調査については、2021年度3月までに調査が完了せず、4月まで調査期間が及んだことから、「やや遅れている。」とした。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、公共図書館における来館者調査と市民に対するウェブアンケート調査を効果的に組み合わせることで研究を遂行していくことを予定していたが、今般の新型コロナウイルス感染症の影響で、図書館は休館もしくはサービスを制限しており、かつまた、開館していても、急に休館となる可能性も否めない。また、できるだけ人と接触することを避けるべきであるという状況において、当面、来館者調査の実施は困難であると判断し、研究手法として、ウェブアンケート調査、もしくは、統計データを用いた分析を用いることとした。今年度は、既に実施している電子書籍貸出サービスの経済価値を測定するためのウェブアンケート調査のほか、ヘドニックアプローチによる図書館設置による経済効果の測定を実施することを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
「需要の移転に関する実証的分析」については、オープンデータを収集したり既に購入済みであるデータを使用するとともに、分析の際には、既に所持しているアプリケーションソフトウェアを使用したことで費用を生じさせなかった。また、2021年3月にウェブアンケート調査を計画・実施し、891,000円を支出したが、調査が年度をまたぎ、調査完了が2021年4月となったことから、当該年度の支出金額が発生せず、2021年度に支出することとしたため、次年度使用額が生じることとなった。
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