研究実績の概要 |
今年度は最終年度にあたるため、これまで調査収集を進めてきた公害関係資料の所在情報データの集約作業を中心に進めた。都道府県立の公文書館に所蔵されている公害関係資料について、歴史的公文書、古文書・私文書のそれぞれについてまとめた。その結果、本研究期間中に、歴史的公文書については各機関のデータベース調査により20,382件のデータを収集し、古文書・私文書についてはアンケート調査により全国61の公文書館より回答を得ることができた。これらのデータは本科研の研究成果報告書にまとめて掲載している。 以上の調査収集により得られた成果として次のような点が挙げられる。まず歴史的公文書については、戦後の資料がほとんどであり、そのことは戦後公害の日常化・全国化とそれに対する行政側の対応を示すものとして興味深い。一方で、公害は戦前にも各地で発生しており、これに関する公文書もあるはずだが、データベース上からはほとんど収集することができなかった。文書標題の問題なども含めて今後の課題である。次に古文書・私文書については、公文書にみられなかった戦前の資料をはじめ、古文書・私文書のカテゴリーに含まれる公文書に類する資料の存在や、行政刊行物が有する資料的価値について多くの知見を得ることができた。 なお、研究全体にかかる課題として、今回の調査収集が都道府県立公文書館にとどまってしまったことが挙げられる。当初計画では、市町村立公文書館ならびに公害資料館についても調査をおこなう予定であったが、新型コロナウイルス感染症の拡大などの問題から思うような調査出張ができなかったことが要因である。あわせて、収集したデータをふまえた公害関係資料の適切な管理・公開に関する指針を研究期間内にとりまとめることができなかった点も、今後の研究課題として指摘しておきたい。
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