研究課題/領域番号 |
19K12709
|
研究機関 | 仙台高等専門学校 |
研究代表者 |
谷垣 美保 仙台高等専門学校, 総合工学科, 准教授 (70369982)
|
研究分担者 |
徳竹 亜紀子 仙台高等専門学校, 総合工学科, 准教授 (70552488)
北島 宏之 仙台高等専門学校, 総合工学科, 教授 (70311553)
中山 まどか 北海道大学, 電子科学研究所, 博士研究員 (20721989)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 算額 / 和算 / オープンマップ / データベース / 赤外線撮影 / 翻刻 / 流派 / 仙台藩 |
研究実績の概要 |
①R3年度もコロナ禍のため全国和算研究大会は開催されなかった。谷垣は、11月13日に東北大学の「理学萩友会オンライン同窓会~コネクト・リガク~」において、「算額の発掘保存と分野横断的研究」というタイトルで招待講演を行った。また「山形県和算研究会会誌」第35号に、「小原温泉薬師堂奉納算額の第1問を『算法天生法指南』の方法で解く」を寄稿した。 ②徳竹と谷垣は、現存する算額の現地調査を実施し、本研究費で購入した専門機関向け赤外線カメラによる撮影を行っている。9月15日には、宮城県石巻市雄勝町大浜の葉山神社の算額、および同市尾崎宮下の久須師神社の算額を調査した。11月27日には「数学と和算の勉強会」の参加者とともに、宮城県角田市横倉馬場内の愛宕神社の算額を調査した。これらはそれぞれ、「雄勝町の絵馬」「岩手県和算研究会会誌」「角田市の文化財」に掲載されているが、「宮城の和算」には未掲載である。そのため紹介する意義は高いと考え「2021年度の算額調査」と題し、葉山神社と塩竃神社の算額・久須師神社と金華山黄金山神社の算額との関連、葉山神社・久須師神社算額全問の初等的な解法、葉山神社・久須師神社・愛宕神社算額の翻刻および赤外線写真を「仙台高等専門学校名取キャンパス研究紀要」に発表した。 ③北島は、R2年度試作したシステムと比べて将来的な利用の拡張性の高い、新しい「算額の所在地マップ」および「算額データ入力フォーム」を構築した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍のためR3年度も全国和算研究大会が中止になり、口頭での研究発表は、東北大学理学部の同窓会イベントにおける招待講演のみとなってしまった。また、和算関連書籍が充実する仙台高専の図書館は、学外者の利用禁止が続いているため、図書館における研究交流はできないままである。現存する算額の調査のほうも、宮城県内には劣化が進み、調査が急がれる算額がまだまだあるが、我々はワクチン接種や感染の収束状況を睨みながら調査計画を立てざるをえなかったので、R3年度も限られた数の算額しか調査することができなかった。こうした厳しい外的状況はR2年度と変わりないが、本研究課題を継続する中で徳竹・谷垣は知識と経験を積み重ね、算額からより多くの情報を読み取る力がついてきていると感じる。 R3年度に大きく進展したのは北島のオープンマップデータベースである。R1年度・R2年度にいろいろなシステムについて調査を行い、考案したシステムを試作していたが、拡張性に難があった。実際に運用すれば改良すべき点も出てくるであろうし、長期的運用を考えると、北島以外に理解できないシステムであることも望ましくない。R3年度はこの点を改善した「算額の所在地マップ」および「算額データ入力フォーム」を構築することができた。まだ不具合があり実際の運用には至らないものの、R4年度中には本研究課題内で成し遂げたかった最低限の所まではできる目処が立った。
|
今後の研究の推進方策 |
北島は「算額の所在地マップ」および「算額データ入力フォーム」の不具合を解消し、改善する。谷垣・徳竹は宮城県内に現存する算額の現所在を確認する。また、算額が奉納されたお寺や神社の住所が『宮城の算額』『宮城の和算』等の出典からだけではわからないので、住所の特定作業を進める。R1年度~R3年度にいくつもの算額を調査してみて、実際に現地に出向いて現物を自分の目で見て、関係者からお話を伺わないとわからない情報がたくさんあると感じた。オープンマップデータベースの情報を充実させるためにも、コロナ禍で許される範囲で、できるだけ多くの算額の現物調査・赤外線撮影を実施したい。 またオープンマップデータベースを公表するためにも、谷垣・徳竹はそれぞれ数学面・歴史面から県内の算額の研究を進め、学会等で研究発表を行う。R2年度に調査した、白石市小原地区の算額に関する研究にも進展があったので、それも含め発表したい。R4年度は、秋に全国和算研究大会秋田大会が開催される予定なので、そこでの発表を検討している。しかし我々の研究は学際的であり、元々の本研究課題の目的を考えると、主に和算研究会の方々が参加する学会や論文雑誌だけでなく、郷土史などほかの分野でも学会や論文雑誌で我々のオープンマップデータベースを周知していきたい。どこで発表できるかよく検討して、今より幅広い分野の学会や論文雑誌で積極的に発表を行うように努めたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題はR3年度までの予定であったところ、補助事業期間の延長を申請して承認されたため、R4年度に使用できる助成金が全くない状態であった。R3年度はコロナ禍のため、研究発表の主要な場である全国和算研究大会も開催されなかった。また普段参加している和算関連の勉強会の開催頻度も低くなり、算額の現地調査も自由には行えなかったため、あまり多くの旅費は必要としなかった。R4年度にはコロナウイルスとの共存が進み、研究大会や勉強会の開催、現地調査の実施も従来通りに近づいていくことが予想されるため、無理にR3年度中に使い切ることはせず、R4年度に繰り越すことにした。使用計画に関しては「今後の研究計画の推進方策」にも記載した通り、オープンマップデータベースの情報充実のため、できるだけ多くの算額の現物調査と、赤外線撮影を実施する。また数学面・歴史面から県内の算額の研究を進めて、学会等で研究発表を行う。今のところは全国和算研究大会での発表を検討しているが、元々の本研究課題の目的を考え、より幅広い分野の学会や論文雑誌で積極的に発表を行うように努め、我々のオープンマップデータベースを広く周知したいと考えている。
|