研究課題/領域番号 |
19K12712
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
杉山 岳弘 静岡大学, 情報学部, 教授 (70293595)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 無形民俗文化財 / マルチモーダル・データベース / 収蔵品データベース |
研究実績の概要 |
これまでに明らかにしてきた無形民俗文化財「祭り」を構成する体系化に必要な要素と、対話分析によって得られたシナリオ・モデルを、汎用的なメタ情報で結びつける方法を実装したプロトタイプシステムについて、浜松市文化財課の評価と民俗学の専門家(西浦田楽の研究者)の評価を行った。 具体的には、以下の通りである。 1.2023年度は多くの祭事が開催され、2月27・28日に開催された西浦田楽の追加の調査を実施することができた。また、浜松市文化財課によるプロトタイプシステムの評価を実施し、さらに、祭事で民俗学の専門家とも知りあい貴重な評価を実施する機会を得た。過去に調査した西浦田楽について音楽的な考察を論文化した。 2.追加調査で得られた情報(映像・文献など)を整理し、昨年度、明らかにした祭りの体系的な要素に汎用的なメタ情報でもって結合していく方法を実装したプロトタイプシステムにデータを入力し、現在も継続して整理・登録をしているところである。また、浜松市文化財課による評価から指摘から改善点を明らかにし、学会で発表を行った。特に、西浦田楽の月との関係性や神事ゆえの情報の公開性についての指摘は有益であった。さらに、西浦田楽の研究者からの評価の指摘で、時間軸についての重要な知見を得て、プロトタイプシステムに反映した。一連の評価や学会などで、継承を目的とするなら、別途、能衆ら向けのシステムが必要との指摘を受けて、検討を進めることとした。 3.これまで構築してきた、文化財の持つ深い知識体系を構造的に保存できるようにし、なおかつ、人間の可読性とコンピュータの処理性を備え持つマルチモーダル・データベースシステムについて、メタデータを付与するさいに、さらに人間の可読性・拡張性を高める設計を行った。西浦田楽を対象に、プロトタイプシステムにデータおよびメタデータの入力・登録を行う体制を整えつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度は、2024年1月・2月に多くの祭事も開催され、追加調査を実施することができたが、その整理とメタデータの付与およびデータベースへの登録はまだこれからであるため、やや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
これまでプロトタプシステムの評価と改善を行ってきており、さらに、民俗学の専門家の協力を得ることができるため、無形民俗文化財「祭り」を構成する体系化に必要な要素、対話分析によって得られたシナリオ・モデル、汎用的なメタ情報で結びつける方法に対して、西浦田楽を具体的な対象として、専門的な知見から見直し、整理して評価していく。具体的には、以下の通りである。 1.これまでできていなかった能衆らの追加の調査を、民俗学の専門家と連携して行う体制が整ったので、「祭り」を構成する体系的な要素を専門的な知見から整理していく。 2.概要3で開発したメタデータ入力システムにより、データ登録およびメタデータの作成の効率化と大量入力が可能となる見込みで、2月に調査した西浦田楽の情報を入力して、「祭り」を構成する体系的な要素を整理・追加していく。 3.1で作成したメタデータをプロトタイプシステムに入力して、能衆らの評価を得て、能衆ら向けのシステムの要件定義と仕様作成を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会がオンライン開催が多くなり出張が減ったのと、祭事が2月末開催だったためデータベース化の謝金を使用できなかったため、残額は次年度に学会での成果発表と研究補助のため、旅費および人件費・謝金として使用予定である。またバックアプなど消耗品として使用予定である。
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