本研究では,被災地域で活動する「震災ガイド」に着目し,図書館の所蔵する震災関連資料の利用活性を目指したデジタルアーカイビングシステムの運用効率を向上させることを目的とする.その上で,資料循環型デジタルアーカイビングシステムに求められる持続可能な運用モデルの構築と提案を目指している.最終年度は,主に以下の4点を実施した. 1.少人数且つ短期間で実施可能な震災学習プログラムの開発:コロナ禍により生じた社会的要請を踏まえて,少人数・短期間でオンラインでも実施可能な震災学習プログラムを開発した. 2.上記1の震災学習プログラムで用いる機能の実装:図書館職員に対する意向調査を踏まえた上で,震災学習のプロセスをガイドする機能とともに,資料のメタデータを震災学習の成果として記録するための機能をシステムに実装した. 3.システムを用いた上記2の震災学習プログラムの実施:岩手大学放送大学研修センターにおいて,放送大学の面接授業「震災関連資料と情報システム」の一環として実施した(2022年10月30日,受講生7名).参加者の震災学習の満足度は概ね高く,結果として,14点の資料にメタデータが付与され,それらを用いた6点のレポートが作成された. 4.本研究の総括:本研究で提案するシステム環境を構築し,震災学習を実施することで,資料に新たなメタデータを付与でき,資料と資料の関連を記録することが可能となる.副次的には資料の検索性の向上が見込める.本研究では,コロナ禍により移動の制限がかかる中でも,震災ガイドの動画コンテンツ等を利用することで,現地調査を伴わない震災学習プログラムを効率的に実施できた.また,大学との協働プロジェクトとすることで環境の変化に応じた継続的なシステム改善が可能であった.定期的な震災学習の実施,検索機能の強化,震災の記憶の風化を防止するためのコンテンツ拡充が今後の課題である.
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