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2019 年度 実施状況報告書

「知の理論(TOK)」に基づく学校図書館モデル構築の研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K12721
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

根本 彰  慶應義塾大学, 文学部(三田), 講師 (90172759)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード知の理論 / 教育改革 / 学校図書館 / 知識資源システム / 国際バカロレア
研究実績の概要

研究の初年度に、次の3つの基礎作業を行った。
1)2019年7月に教育と図書館に関する教育論の総まとめの研究書(『教育改革のための学校図書館』東京大学出版会)を刊行し、これに関わって2度の学会発表(「日・米・仏のカリキュラム改革史における学校図書館政策」2019年6月8日(土)日本図書館情報学会春季研究集会、「教育と図書館の関係について考える」2020年2月1日三田図書館・情報学会月例会)を行った。また、これまでの研究を総括する目的で公開シンポジウム「教育改革のための学校図書館」2019年11月30日)を実施した。これらは、すでに実施していた研究を振り返って、これから本研究の足がかりをえようとして行ったものである。
2)現在の「知の理論」の全体像を把握するために、関連の文献を蒐集して目を通した。これには、国際バカロレアや知の理論(TOK)に関するもの以外に探究的学習や最近の教育改革に関する文献が含まれる。さらには、知の理論を意識したときに必要な作業として、西欧的なコンテクストの「知の理論」のルーツがどこにあるのか、また、日本の近代化の過程でそれらがどのように扱われてきたのかについて明らかにすることが含まれる。そのために、学術論、科学史、思想史、教育史、翻訳論などの広範な領域の文献を参照した。また、別の研究プロジェクトとして、日本の近代化における「知識資源システム」の構築の特徴を明らかにする予定ではあるが、本研究はその基礎作業としても位置づけている。
3)学校図書館と国際バカロレアに関わる実践者および研究者に対してコンタクトをとり対面での意見交換を行った。(茗渓学園、大阪教育大学附属池田高校、京都市立堀川高校)これは今後の研究の布石になるものである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

「国際バカロレア」「知の理論」「学校図書館」の3つの概念を組み合わせて、日本の教育改革の実態を把握しようという試みは、かなり困難な作業になることは最初から予想されたが、それは一部当たっていた。日本で国際バカロレアはインターナショナルスクールでかなり導入されているものではあったが、文部科学省の推進策もあって、一般の中等教育の学校にも導入されつつある。しかしながら、それらの現場にお邪魔して担当者に伺ってみると、導入自体にかなりの難しさがあることが分かってきた。初等教育からの一貫したカリキュラムに基づいていればともかく、教育方法がかなり違っているので教員も学習者もまだまだ不慣れなところがあった。そのなかで「知の理論」は国際バカロレアのカリキュラムの中心にあるものであるが、それをどのように位置づけるのかについても模索中のところがあるようだ。このような実態把握に時間がかかったので、1年目はやや遅れ気味となっている。
ただし、だからこそ本研究の意義を確認することができたとも言える。国際バカロレア・カリキュラムの科目のなかでこの「知の理論(TOK)」と「課題論文(EE)」は教科を超えた総合的科目として位置づけられ、これらは学習者が図書館での情報探索を行うことを中心に進めることになっているから、研究方針には間違いがなく、2年目以降にその解明をするための準備ができたことになる。

今後の研究の推進方策

1)国際バカロレアを実施している学校との連携
すでにつくば市の茗渓学園を訪問してTOK担当の教員および司書教諭とのコンタクトをとっている。今後、ここでの実践の様子を観察し、記録する予定にしている。
2)国際バカロレアにおける学校図書館
オランダのアムステルダムインターナショナルスクールの司書Anthony Tilke氏はThe International Baccalaureate Diploma Program and the School Library(2011)の著者であり、この方面の世界的リーダーである。この著書について分析を行うことと、この人に連絡をとり、COVID-19騒ぎが沈静化すれば実際に当校を訪問して意見交換を行う。
3)「知の理論(TOK)」および「課題論文(EE)を導く思想的背景の解明
国際バカロレアのカリキュラムがどこから来ているのかについての研究は遅れている。次橋(2017)は国際バカロレア創立時の中心人物A. D. C. ピーターソンの思想を検討したものであるが、このなかでも言及されているピーターソンの著作Schools across Frontiers: The Story of the International Baccalaureate and the United World Colleges(2nd ed. 2003)を手がかりに学校図書館を含めて、学習者が自ら知を構築する学習方法がどのような教育思想から生まれているのかを明らかにする。また、日本の通常の学校ではこうしたカリキュラムの実現が難しい理由について、「知識資源システム」という概念を用いて歴史的に検討することを行っているが、これを継続する。

次年度使用額が生じた理由

最終的な端数が出たためで、これは次年度の直接経費に加えて使用する。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [学会発表] 教育と図書館の関係について考える2020

    • 著者名/発表者名
      根本彰
    • 学会等名
      三田図書館・情報学会月例会
    • 招待講演
  • [学会発表] 日・米・仏のカリキュラム改革史における学校図書館政策2019

    • 著者名/発表者名
      根本彰
    • 学会等名
      日本図書館情報学会春季研究集会
  • [図書] 教育改革のための学校図書館2019

    • 著者名/発表者名
      根本彰
    • 総ページ数
      341
    • 出版者
      東京大学出版会
    • ISBN
      978-4-13-001008
  • [備考] オダメモリー

    • URL

      https://oda-senin.blogspot.com

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公開日: 2021-01-27  

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