1)背景の思想研究 国際バカロレアのカリキュラム、とくに「知の理論(TOK)」「課題論文(EE)」の背景に、西洋の人文主義の系譜があることに着目し、人文主義が日本の教育思想、図書館思想とどのような関係にあるのかについて著書『アーカイブの思想』(みすず書房)にまとめた。また、人文主義と図書館の思想および技術がどのような関係にあるのかを明らかにするために、さらに研究を発展させて「知識資源システムとは何か」「知のアーカイブ装置としての図書館を考える」を執筆した。 2)学校図書館史研究 日本では戦後占領期に学校図書館は経験主義教育を支援することで注目されたが、まもなく教育課程自体が系統主義教育に切り替えられた。このため十分な人の手当も行われないままに長く読書施設とされたことに対する歴史的な批判をするために、「戦後学校図書館政策のマクロ分析」(査読済み)「戦後新教育における初期図書館教育モデル」(査読中)を執筆し、日本図書館情報学会、三田図書館・情報学会の学会誌に投稿中である。 3)IBDPカリキュラムと学校図書館の関係 国際バカロレアのカリキュラムがどのように学校図書館に関わるのかを明らかにするために、カリキュラム構造の分析ととくにTOKがどのように実施されているのかをIB公式文書を用いて明らかにし、三田図書館・情報学会学会で発表した(「IBDPの「知の理論(TOK)」「課題論文(EE)」が図書館情報学に示唆するもの」)。 4)国際的に学校図書館をIBDPに位置付けるための理論的実践的活動を行っているティルク氏の著書『国際バカロレア教育と学校図書館:探究学習を支援する』の日本語版の翻訳の監訳を行い、2021年9月に学文社から刊行した。また、2021年11月23日にティルク氏の講演を含めて、IBDPと学校図書館をテーマにした公開シンポジウムをオンラインで開催し、150人以上の参加者を集めた。
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