研究実績の概要 |
本研究は言語反応時と安静時の脳の機能的磁気共鳴画像データ、機能的連結性データを取得し、そこに深層学習や機械学習を適応するモデルを開発することを目的としている。コロナ禍でfMRI実験が進まないなか、以前の研究室データやWeb公開データを利用して、いくつかの国際学術雑誌論文から論文を発表することができた。それらは Sunao Yotsutsuji, Miaomei Lei, Hiroyuki Akama, Evaluation of Task fMRI Decoding with Deep Learning on a Small Sample Dataset, Frontiers in Neuroinformatics, 2021, Hiroyuki Akama and Airi Ota, Area-specific Biased Global Efficiency in Functional Connectivity Provides Features Negatively Correlated with Age, BioExiv Neuroscience, 2020 である。 前者では、fMRIの小規模データセットに対し、予測のための深層学習を適用する場合、方法論的な適正化を検討しつつ、2D畳み込みネットワーク(M2DCNN)による分類器が、3D畳み込みネットワーク(3DCNN)を凌駕して、タスクを行う際の脳反応の集団レベル機械学習において高い精度をもたらすことを示した。本研究のように言語反応のfMRIデータを機械学習にかける場合、個人の多様性や機械学習特有の情報漏洩(information leakage)など、様々な問題を抱えることになる。この問題を克服する方法を示したという意義が本研究では特に強調できる。 後者では安静時機能的連結性の全体効率を計算し、脳アトラスで、z軸に沿って上下の領域に系統的な1, -1の重みを割り振るバイアス付き全体効率を求めると、それが実験参加者の年齢と有意な負の相関を示すことを明らかにした。これは、安静時機能的連結性の個人差に系統的にアプローチする上で重要な成果であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍での研究態勢見直しと状況に応じた適切な対応づくりはできたので、コロナ禍の早期終息を期待しつつ、科研費執行の猶予・延長を申請しながら、本研究テーマに関連する以前の研究室データやWeb公開データを利用して、研究業績を発表していきたいと考えている。コロナ禍が終息することを見越し、終息後はすぐにfMRI実験を開始できるよう、実験参加者の人数や実験デザインを見直すなどして、ヒトを対象とした研究倫理審査委員会への研究申請を準備し直す予定である。今年度は、5月にHiroyuki Akama, Yixin Yuan, Shunji Awazu, Task-induced Brain Functional Connectivity as a Representation of Schema for Mediating Unsupervised and Supervised Learning Dynamics in Language Acquisition, Brain and Behavior, Wiley, 2021を審査付き国際学術論文として発表することができ、研究業績の社会還元という面では順調であると言える。この論文は言語習得における教師なし/あり学習がもたらす脳機能変化とその個人差に焦点を当てたfMRI実験研究だが、これらの小脳の機能的ネットワークが関与していることを明らかにしたという点で本研究における大きな成果と言える。fMRI実験の再デザインを今後行う際、ここで得られた知見をできるだけ有効に織り込んでゆきたいと考えている。
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