研究課題/領域番号 |
19K12727
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
赤間 啓之 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 准教授 (60242301)
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研究分担者 |
粟津 俊二 実践女子大学, 人間社会学部, 教授 (00342684)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 文理解 / 脳科学 / fMRI / 計算神経言語学 / 機能的連結性 / 機械学習 / 深層学習 |
研究実績の概要 |
本研究のテーマである、機能的連結性データの機械学習・深層学習に関しては、多くの数の論文が完成、出版された。このうちIF付き国際学術論文(査読付き)に絞ると、以下のようになる。Naoki Okamoto, Hiroyuki Akama, 2021. doi:https://doi.org/10.3389/fninf.2021.709179 本研究では、深層ニューラルネットワークの一種であるInvariant Information Clustering(IICと略す)を拡張し、現在のところASDの判別において最も良好なクロスサイトモデリング結果を得ることができた。 Hiroyuki Akama, Yixin Yuan, Shunji Awazu, 2021.doi:https://doi.org/10.1002/brb3.2157 ランメルハートのスキーマ理論に則り、言語習得における教師なし/あり学習がもたらす脳機能変化とその個人差に焦点を当てたfMRI実験研究であるハイブリッド学習が脳の反応にどのような変化をもたらすか、タスクベースの機能的連結性の観点から解析した。 Sunao Yotsutsuji, Miaomei Lei, Hiroyuki Akama,2021. doi:https://doi.org/10.3389/fninf.2021.577451 fMRIの小規模データセットに対し、予測のための深層学習(deep learning)を適用する場合、2D畳み込みネットワーク(M2DCNN)による分類器が、3D畳み込みネットワーク(3DCNN)を凌駕して、タスクを行う際の脳反応の集団レベル機械学習(group-level MVPA)において高い精度をもたらすことを示した。このように、本研究を支える骨格となるトピックスに関し、充実した成果が上がっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナ禍により、当初予定したヒトを対象とする脳機能画像撮像(fMRI)実験が行えなくなり、研究手法を変更することを余儀なくされた。fMRI実験は信号取得の際に生理的ノイズを最小限にしないといけないが、実験施設として以前から利用させていただき、本研究でも申請していた医療機関のMRI装置では、規約上、新型コロナ禍ではマスク着用の必要がある。しかし、マスク着用による呼吸からのノイズは、特に本研究の核心部である安静時機能的連結性データの場合、脳の信号取得上、けっして望ましくはない。以上を鑑み、本研究では、直接行う予定の実験を断念し、同種類のデータで既に公開されているもの、共同研究等の枠組で使用許可が下りているものを利用し、本研究計画段階で構想していた方法論、アルゴリズムを適用して、データシェアリングによる新手法分析やメタ分析に切り替えることになった。これらの手法はここ数年、世界的にも広く行われているアプローチであり、同時に多種多様かつ大規模なデータ処理を行うため、研究構想の段階ですでに用意されていたスーパーコンピュータの活用が必要となる。そのため、計算技術の向上が得られ、直接実施される実験以外は、当初の構想通りの成果が上がり、また多種のデータセットを次々に利用し、計算にかけることで、予定より多くの数の論文が完成、出版され、また現段階では、査読中、あるいは投稿準備中である。特に、本研究の核心となる言語活動と関係する機能的連結性データの機械学習・深層学習に関しては、代表論文となりうる無意識の言語処理モデルに関する研究が近日中に投稿予定である。そうした事情もあり、延長を申請する次第である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、投稿済み、もしくは投稿準備中で、本研究と密接に関係する論文は以下の通りである。この中で本研究の核心となる言語活動と関係する機能的連結性データの機械学習・深層学習に関しては、代表論文となりうる無意識の言語処理モデルに関する研究を投稿準備中である。そのひとつは Sunao Yotsutsuji, Shunji Awazu, Hiroyuki Akama, Linguistic semantic processing function slopes into visual area: study of representational similarity analysis and functional gradient であり、大規模言語コーパスに基づく自然言語処理訓練モデルと大規模脳機能反応画像データの間でエンコーディング機械学習と関係類似性分析を行い、無意識の意味処理活動の神経基盤に迫ったものである。これは現在、英語校閲サービスを受けている投稿直前段階で、本年夏前までに投稿する予定である。もうひとつは、四辻 嵩直、赤間 啓之、文章生成深層モデルによる脳内言語の再構成 であり、認知科学誌に投稿済みであり、査読対応を行う必要がある。これは文について考えている脳反応からその文を再現するAIの実験結果を扱ったものである。以上、本研究を締めくくる業績を最終年度に公開する方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ禍により、当初予定したヒトを対象とする脳機能画像撮像実験が行えなくなり、研究手法を変更することを余儀なくされた。fMRI実験は信号取得の際に生理的ノイズを最小限にしないといけないが、本研究でも申請していた医療機関のMRI装置では、規約上、マスク着用の必要があり、脳の信号取得上、望ましくはない。以上を鑑み、本研究では、直接行う予定の実験を断念し、同種類のデータで既に公開されているもの、共同研究等で使用許可が下りているものを利用し、本研究計画段階で構想していた方法論、アルゴリズムを適用して、データシェアリングによる新手法分析に切り替えた。そのため、複数の論文が執筆され、現段階では、査読中、あるいは投稿準備中である。特に、本研究の核心となる言語活動と関係する機能的連結性データの機械学習・深層学習に関しては、代表論文となりうる無意識の言語処理モデルに関する研究が近日中に投稿予定である。そのため、英文校閲料、オープンアクセスのための出版費用が必要となる。そのうちのひとつは当該分野のトップジャーナル、Neuroimageに投稿準備中なため、その論文だけで総費用はおよそ70万円以上かかることが予想される。その他、Heliyon, Frontiers in NeuroinformaticsなどすべてIF付きのオープンアクセスジャーナルを利用しそこで執行する予定でいる。
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