研究課題/領域番号 |
19K12728
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
池田 尊司 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 助教 (80552687)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 脳磁図 / 自閉スペクトラム症 / 視覚野 / 色知覚 |
研究実績の概要 |
自閉スペクトラム症(ASD: autism spectrum disorder)児は対人コミュニケーションに困難を抱えていることが知られているが、その根底には低次の感覚・知覚レベルでの過敏や鈍麻が生じていることが指摘されつつある。本研究では、5から7歳のASD児の視覚刺激に対する視覚野の反応特性を、定型発達(TD: typically developed)児との比較において定量的に評価することが目的である。脳機能計測には、時間・空間解像度に優れ、幼児に対して計測ストレスの少ない脳磁図(MEG: magnetoencephalography)を用いた。 MEGデータの取得時に用いた視覚刺激は、一般的に用いられている輝度コントラストからなるパターンリバーサル課題を幼児向けに改変し、さらに赤と緑の色コントラスト条件を追加したものであった。幼児MEGデータの取得に際し、1条件あたり120試行分のデータを取得し、2条件全てを10分以内で計測できるようにプロトコルを策定した。この刺激を観察しているときの脳活動をMEGで計測し、計測終了後にはアーチファクトやノイズを取り除くための前処理を行った。 同施設内に設置されたMRIで取得したT1強調構造画像と合わせて分析を行うことで、鳥距溝から後頭極までの初期視覚野に信号源が推定できることを確認した。 また、実験参加児のスクリーニングと、脳活動と視空間性認知機能との相関を検証するためのデータを取得した。色覚検査には石原色覚検査表IIコンサイス版14表を、知能検査にはK-ABC(Kaufman assessment battery for children)を用いた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
解析に必要なASD児およびTD児のMEGデータ・色覚検査および知能検査の結果が揃い、前処理およびconnectivity解析を進めている。MEGデータ取得時に記録した顔動画を用いて視線解析を行い、画面中央を注視できていた試行のみを解析対象に含めるように前処理を変更した。MEGで取得した脳活動の信号源を推定するため、各個人のMRI画像より灰白質表面データを抽出した。 データ解析のために多くの時間を要し、次年度へ研究期間延長を決定した。
|
今後の研究の推進方策 |
2021年度はデータ解析に多くの時間を費やしたことと、学会発表の機会が得られなかったことから、次年度へ1年間研究期間を延長してデータ解析を完了させ、成果報告として原著論文の投稿と学会発表に努める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に未完了となっているデータ解析を2022年度に完了し、次年度繰越分は成果報告のための出張旅費・英文校閲および論文投稿にかかる費用、およびデータ保管に必要な物品費として使用する。
|