自閉スペクトラム症(ASD: autism spectrum disorder)児は対人コミュニケーションに困難を抱えていることが知られているが、その根底には低次の感覚・知覚レベルでの過敏や鈍麻が生じていることが指摘されつつある。本研究では、5から7歳のASD児の視覚刺激に対する視覚野の反応特性を、定型発達(TD: typically developed)児との比較において定量的に評価した(ASD児45名・TD児38名)。脳機能計測には、時間・空間解像度に優れ、幼児に対して計測ストレスの少ない脳磁図(MEG: magnetoencephalography)を用いた。 MEGデータの取得時に用いた視覚刺激は、一般的に用いられている輝度コントラストからなるパターンリバーサル課題を幼児向けに改変し、さらに赤と緑の色コントラスト条件を追加したものであった。幼児MEGデータの取得に際し、1条件あたり120試行分のデータを取得した。この2種類の刺激を観察しているときの脳活動をMEGで計測し、視覚野を関心領域とした解析を行った。同施設内に設置されたMRIで取得したT1強調構造画像と合わせて分析を行い、信号源の推定に活用した。 また、幼児期のASD特性と視覚認知の関係について調査するため、眼球運動計測を併用した実験を行った。
|