2022年度では,2021年度に実施した計測実験を再検討し,問題点や課題点を改善した.まず,身体所有感における運動の意図,および運動意図の達成度の影響を調査した研究においては,被験者が少なかったため,被験者を増やして計測し(実験1:10名,実験2:14名),データ解析を実施した.実験1において,運動の意図が身体意識へ与える影響を調べるために,操作課題とパントマイム課題について調べた結果,運動主体感では実際に手・腕を動かしているため両課題とも評定値が高くなっているが,課題間で有意差が認められた(p<0.05).身体所有感ではパントマイム課題での評定値は操作課題と比較して有意に低くなっている(p<0.05).これらの結果は,対象物把持の意図が身体意識に影響していることを示しており,高次の意図が身体意識(運動主体感と身体所有感)を促進させたと考えられる.実験2において,運動意図の達成度が身体意識へ与える影響を調べるために,成功条件と失敗条件で操作課題を行った.成功条件では,全試行の8割において意図と一致した結果を提示し,残りの2割では不一致の結果を提示した.失敗条件では一致と不一致の割合を逆にした.この結果,運動主体感では条件間で有意差が認められた(p<0.05).身体所有感では失敗条件での評定値は成功条件と比較して有意に低くなっている(p<0.05).これらの結果は運動意図の達成度が身体意識に影響していることを示している.従って,運動意図が達成できたという高次の情報が身体意識(運動主体感と身体所有感)を促進させたと考えられる.
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