研究課題/領域番号 |
19K12730
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
足立 幾磨 京都大学, 霊長類研究所, 准教授 (80543214)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 感覚間一致 / 言語進化 / 系列処理 / 空間表象 / 比較認知科学 / 時間知覚 |
研究実績の概要 |
本研究では、ラベル生成・理解、概念メタファーの進化的基盤として感覚間一致に着目し、比較認知科学的なアプローチをおこなっている。目的は特に下記の2点に集約される。まず、①多様な感覚間一致の比較研究をおこない、各感覚間一致が生じるメカニズム、その進化的な基盤を解き明かすこと、つづいて、②複数個体場面を設定し、感覚間一致の共有を促すことで、個体レベルの感 間一致が強化調節されるのかを分析し、「共創的表象」の創発プロセスをあきらかにすること、である。具体的には本研究では、以下の二つの軸で研究をおこなう。 1. 感覚間一致の進化的機序を探る比較認知科学: チンパンジーを主たる被験体にもちい、かれらがどのような感覚間一致をもつかを探索的に分析する。具体的には、明度と音の高低、色と時間知覚、時間知覚と空間の間の感覚間一致の研究を推進している。これまでのところ、明度と音の高さの間には、人と同様の感覚間一致が生じている一方で、色と時間知覚の間には明確な感覚間一致が生じていないことが明らかになってきた。時空間の感覚間一致については現在時間弁別課題の訓練し、先行提示された音刺激の長さと次発の音刺激の長短を判断させる課題の訓練に成功した。今後、この課題遂行時に空間情報を干渉刺激としてもちいることで、感覚間一致が生じるかを分析する。こうした探索的な研究を通して、ヒトの感覚間一致との相違点を浮き彫りにし、言語進化の霊長類的基盤となった可能性のある感覚間一致と、ヒトが言語を獲得してから言語との相互作用の中で生まれてきた感覚間一致とを切り分ける。 2.「共創的表象」創発プロセスの探求:チンパンジーを対象種とし、個体レベルの感覚間一致の分析に加え、複数個体が感覚間一致を共有する場面を設定することで、個体レベルの感覚間一致が強化・調節されるのかを分析する。現在複数個体場面を実験的に設定する馴致をおこなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
複数個体場面の設定のための馴致が、新型コロナ禍のなか、研究室の再編・実験停止等もしょうじたため、実験実施が断続的となってしまっており、思うように進められておらず、やや遅延が生じている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度も個体ベースの感覚間一致研究を継続的に推進するとともに、新型コロナウィルス感染症の状況をみながら、できる限り複数個体実験場面の設定に注力する予定である。もしこの複数個体場面の設定がかなわない場合には、その分を前述の目的1、すなわち個体ベースの探索的研究をより重点的にすすめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は予定していた国内旅費、海外旅費がコロナ禍により大幅な変更を余儀なくされたため、次年度使用額が生じた。 (使用計画) 新型コロナウィルスが落ち着き次第、海外学会への参加、および国内外の研究打ち合わせ等を再開する予定である。
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