チンパンジーを主たる被験体にもちい、かれらがどのような感覚間一致をもつかを探索的に分析した。具体的には、明度と音の高低、色と時間、順序と空間、年齢と空間、時間と空間の間の感覚間一致の研究を推進してきた。これまでのところ、明度と音の高さ、順序と空間の間にはヒト同様の感覚間一致が生じている一方で、年齢と空間、色と時間の感覚間一致については感覚間一致が認められなかった。つまり、時間軸を伴う感覚間一致は、チンパンジーには共有されていない可能性が示唆される。時間軸の知覚およびそれに付随する感覚間一致は、ヒトが言語を獲得することにより時間概念を拡張・表象する中で、生まれてきた可能性が示唆される。
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