研究課題
アルツハイマー型認知症(AD)と前頭側頭型認知症(FTD)は、脳の異なる部位に萎縮が生じる神経変性疾患である。前者は記憶障害、後者は言語障害や行動障害が前景に立つことをそれぞれ特徴とするが、両疾患とも初期の臨床症状として、時間認知に関連した障害が生じることが指摘されている。本研究は、ADとFTDの時間認知障害の特徴とその背景にある神経基盤を明らかにすることを主な目的とするものである。また健康高齢者をコントロールとして加えることで、認知症と非認知症の違いについても検討する。本研究の対象は、大阪大学医学部附属病院神経科・精神科の認知症専門外来を受診し、継続的にフォローされているADおよびFTDの患者である。今年度は過去に当院当科を受診したADとFTDの患者に関する神経心理検査の結果について後方視的に予備的分析をおこなった。具体的には複雑な日常生活動作(IADL)の障害が中等度より軽い患者を抽出し、両疾患の患者について時間認知に関係する項目、つまり時間の見当識(今日が何年何月何日で、今は何時頃か)の成績を比較した。加えて昨年度に引き続き、介護者に対して、患者の日常生活で生じる時間や時間経過などに関連した行動について聴取を継続した。上記と平行して、時間認知課題の完成を目指し、課題設定や刺激の調整をおこなった。次年度は予備的な実験を進めて完成させた後に本実験を開始する。また患者データベースの中から対象者のリストアップを継続し、滞りなく研究が進むように配慮する。
3: やや遅れている
時間認知課題の完成にはADとFTDの患者で予備的実験を重ねておこなう必要があるが、各疾患の患者が無理なく実施可能な課題を確定するために必要な参加人数の確保に時間を要しているため。
引き続き、時間認知課題の完成を目指して研究を進める。特に課題実施が可能なFTDの患者のリストアップ・リクルートを継続する。
国内および国際学会への参加・発表に関わる旅費を計上していたが、新型コロナ感染症流行のためにほとんどすべてオンライン開催へと変更になったため。具体的な実験の開始に遅延が生じたため。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件)
PLoS ONE
巻: 17 ページ: -
10.1371/journal.pone.0265484
Frontiers in Human Neuroscience
巻: 15 ページ: -
10.3389/fnhum.2021.784026
10.3389/fnhum.2021.766935
Human Brain Mapping
巻: 42 ページ: 1359-1375
10.1002/hbm.25298