本研究は飼育下にあるシロイルカを対象として,まず人工的な言語を用いて動詞を理解させ,それをすでに先行研究において命名されている名詞と組み合わせることにより「文」を作成し,それが理解できるかを検証した. まず,新たに学習させた2種類の動詞(「胸ビレで触る」「吻で触る」)を図形文字であらわし,理解させた.そしてこれに2種類の名詞(「フィン」と「マスク」)をあらわす図形文字を組み合わせて目的語のある文を4種類作り,その文意が示す通りの行動が可能かを検証した. その結果,2つの動詞についてはよく弁別され,学習ができたと考えられる.次いで文についてみると,4種類の文のいずれについても,開始当初は混乱し,間違いも多く正解率も低かったが,試行の進行に伴って徐々に文の意味を理解し始める傾向が見られた.ただし,文によって達成度に違いがあるので,まだ完全に理解したとは言い難い.
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