コミュニケーションにおける言語情報と非言語情報の相対的重要性には文化差があり,このことが多文化間コミュニケーションを妨げる一因となっている.本申請課題ではこの問題を解決するために,コミュニケーションにおける言語情報と非言語情報のバランスを定量化し,制御することを目的とする. 項目1では言語・非言語バランスの定量化手法として,注意バイアスを利用した手法の有効性について実験的に検討する.項目2では言語・非言語バランスの制御手法について検討する.具体的には,音声の抑揚と明瞭度の操作による制御手法,視覚的注意誘導による制御手法について検討する.項目3では会話場面を用いて,上記手法の有効性について検討する. 3年目である令和3年度は,項目2および項目3について引き続き検討を進めた.項目2については,抑揚の大きさを操作する実験を完了した.項目3については,仕事・観光・医療などの会話場面を設定した実験を実施した.実験の結果,抑揚の大きさに応じて言語・非言語バランスが系統的に変化するとの結果が得られ,会話場面における有効性が示された。 これらの成果は,言語・非言語バランスという新たな視点からコミュニケーションを包括的かつ定量的に説明する枠組みを提唱する点に理論的な独自性がある.また,定量化手法を実際にコミュニケーション場面に適用し,バランスを制御し,多文化間コミュニケーションにおける有効性を評価する点に社会的な意義がある.
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