研究課題/領域番号 |
19K12738
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
折笠 千登世 日本医科大学, 先端医学研究所, 准教授 (20270671)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 養育行動 / オプトジェネティクス / MCH / オキシトシン / 社会行動 / DREADD / Creリコンビナーゼ |
研究実績の概要 |
本研究では、養育行動発現に関わるオキシトシン-メラニン凝集ホルモン(MCH)ニューロンそれぞれの関係性と分子基盤を明らかにすることを目的とする。今年度は、MCHニューロンの養育行動への関与を明らかにするためにDREADD法による解析とオプトジェネティクスによる解析を行った。MCHニューロンの神経活動を促進する条件下で、ニューロン特異的な雌雄マウスの養育行動の検討し、DREADD法の解析においては、MCHニューロンの神経活動抑制系を加え対照群との比較において養育行動に対する効果を調べた。DREADD法による検討の結果、養育行動の抱え込み行動に対する効果が確認された。MCHニューロンの神経活動抑制系について、Creリコンビナーゼ依存的に脱落変性させるジフテリアトキシン(DTA)を用いた検討を行った。MCHニューロンを65~70% 脱落変性させることを確認し、養育行動に対する影響が確認され、抱え込み行動が有意に減少していた。養育行動の指標の一つである仔なめ行動に対する効果はなく、雌雄共にMCHニューロンの抱え込み行動に関与していることが示唆された。オプトジェネティクス解析においては、現在至適条件の検討を行っており、周波数による行動の変化が確認されている。MCHニューロンは睡眠との関連性に関して研究が多数報告されており、異なる行動それぞれにに対する周波数特性の可能性が考えられるため今後さらに検討を行っていく。またオプトジェネティクス行動解析のためには、MCHニューロンにCreリコンビナーゼ依存的にチャネルロドプシン(ChR2)を発現させて解析する必要があるが、MCHニューロンに導入されたChR2の神経線維の走行についても解析が可能であり、形態学的検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、養育行動発現に関わるオキシトシン-メラニン凝集ホルモン(MCH)ニューロンそれぞれの関係性と分子基盤を明らかにする事にある。今年度はMCHにおける養育行動の関連について、解析の手法を複数変え検討を行った。今年度MCHニューロンと養育行動促進の関連性についての新たな所見を得ることができた。来年度以降は、母性行動の促進に重要な役割を果たしているオキシトシンとMCHニューロンの関連性について、養育行動促進の神経回路の詳細な検討を行っていく。オキシトシン-Cre リコンビナーゼTgマウスとMCH-Cre Tgマウスの2種類のマウスを掛け合わせたオキシトシン-MCHバイジェニックマウスを作成し、養育行動の神経回路網構築に関わるオキシトシン-MCHニューロンの関連性を明らかにするために、現在準備に取りかかっている。バイジェニックマウスを完成させることによる解析の進展が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
今年後までの研究によって、MCHニューロンはいくつかの養育行動のうち抱え込み行動に関わることを明らかにすることができた。養育行動はいくつかの行動パターンが組み合わさっており、複数の脳領域が総体としての養育行動を完成させていることが考えられる。MCHニューロンの投射経路に関する報告があり、本研究に用いているベクターは、チャネルロドプシン(ChR2)とEYFP蛍光タンパクをつなぎ合わせており、MCHニューロンに導入された後の投射経路を追うことのできる利点がある。MCHニューロンの投射経路は脳領域の広範囲にわたることは既に報告されているが、本研究の検討によりこれまでに報告がなされてきていなかった脳領域(PVN)に神経連絡の走行を認められることが明らかにしている。今後の検討は、実績の概要の目的にあるように、PVNにあるオキシトシンニューロンとの連絡性において養育行動をどのように調節しているかを明らかにすることにある。現在、オキシトシン-MCHバイジェニックマウスの作成が進行しており、異なる2種類のベクターを用いた解析によって、これらニューロンの関連性が明らかになるとなると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
報告書作成時点での残額は19,632円であったが、3月中に実験で必要な抗体の購入金額が66,528円であり、残額を超えてしまったため次年度まわしの注文とした。
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