令和5年度は、性格特性に着目した研究および身体生理反応に着目した研究の2つを行った。 性格特性に着目した研究では、令和4年度までに引き続き、回避性感情における接近性反応の機能的意義について、有害事象の発生原因に関する接近性反応、有害事象の発生結果に関する接近正反応、有害事象の生起可能性、スリル希求、曖昧さの統制の5つの観点から、質問紙法による検討を行った。その結果、有害事象の発生原因に関する接近性反応は、回避性感情やスリル希求、有害事象の生起可能性、曖昧さの統制とは関係しなかった。一方で有害事象の発生結果に関する接近性反応は、回避性感情、有害事象の生起可能性、曖昧さの統制と関連していることが強く示された。令和5年度の本結果は、質問項目等をより精緻なものとした調査から得られたものであるが、令和4年度までの結果と一貫していることから、一定程度の頑健性を持つと考えられる。 身体生理反応に着目した研究では、回避性感情に伴う接近性反応と身体生理反応および内受容感覚との関係にちうて検討を行った。具体的には、回避性感情を喚起させうる視覚刺激を閾下提示した際の皮膚電気活動、内受容感覚の精度、および視覚刺激に対する接近性反応との関係性について検討を行った。その結果、皮膚コンダクタンス反応の強度と視覚刺激に対する接近性反応との間に一定程度の関連性が観察された。但し、内受容感覚を測定する作業に課題も挙げられた。
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