研究実績の概要 |
本研究では、顔画像解析と表情筋電図法によって表情を定量化し,時系列情報を考慮した解析手法によって表情模倣の時間的特性を明らかにすることを目的としている。2020年度は、コロナ禍により人を対象とした対面実験が実現できなかったため,顔表情データベース(Fujimura & Umemura, 2018)をソースとした探索的検討を行った。まず顔表情刺激を顔の動きを機能的単位で表現したAction Unit(AU) (Ekman & Friesen, 1978; Ekman, Friesen, & Hager, 2002)によって表情の時空間情報を定量化した。これらのAUに基づく時空間情報から,表情から知覚される感情状態が予測できるかを機械学習(Support Vector Machine: SVM)を用いて検討した。その結果,快-不快の評価については,動画表情における変化のピーク値を指標とした場合,口角を上げるAU12やAU6が寄与していることが明らかになった。また表情の感情種によって,AUの時空間的情報のいずれのパラメーターが感情のカテゴリー判断に寄与しているかも異なることが明らかになった。 さらに,表情解読ソフトウェアで顔刺激のAU強度を算出したところ,各感情種に定義されているAUの表出強度について,顔面の左右差がみられた。これは,心理評定データによって明らかにされていた快-不快の感情強度の顔面左右非対称性を裏付けるものである。これらの結果をまとめ,国際誌投稿の準備中である。
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