研究課題
歯の配列を示す歯列弓は,口腔横断面内において,切歯の切縁,犬歯の尖頭,そして臼歯の頬側咬頭の尖頭を通る平面内の曲線と定義されている.現在の歯列の求め方は,初めに研究対象者の口腔内模型をキャスティングにより作成し,その後にデジタルノギスによる測定等が一般的である.しかし,これらの方法では横断面内における歯列を二次元的に表現しており,横断面外に位置する歯軸の情報は含むことはできない.さらに,この種の測定法では検者間誤差が生じやすく,上下顎歯の位置関係を正確に知ることはできないという大きな欠点がある.2020年度には,成人10名の上下顎骨を撮影したコーンビームCT画像から骨モデルを三次元再構成し,解剖学的特徴箇所である下顎両側オトガイ孔2点および上顎切歯管1点を利用して口腔内に三次元ワールド座標系を構築し,全ての歯の三次元モデルを作成した.各歯の幾何学的重心(COG)と主成分分析法で計算した歯軸(PC-A)を求め,空間内のCOGとPC-Aを横断面,冠状面および矢状面上に投影して,各平面内でのPC-A角度とCOGによる歯列を示した.その結果,冠状面では,上顎歯は全て頬側に歯が傾き,下顎歯は,中切歯,側切歯,犬歯,第一小臼歯は頬側に向いているが,第二小臼歯,第一,第二大臼歯は舌側を向く.矢状面では,上顎歯は第二大臼歯だけが遠心側に傾いているのに対し,下顎歯は全て近心側に傾くという一般的な正常咬合者の特徴を定量的に明らかにした.これらの歯軸角度の結果は,国内外でも見受けられない新たな結果であり,解剖学的分野のみならず臨床歯科学に有益な知見を示した.
2: おおむね順調に進展している
2020年度までに,われわれが新たに提案した口腔内ワールド座標系に基づき,各歯の重心点から求めた歯列と歯の三次元形状から求めた歯軸を三次元的に表現する方法は,ほぼ確立した.一方,本座標系を利用する三次元顎運動解析の予備実験をはじめ,現在,解析結果をまとめている段階である.
三次元歯軸と歯列に関する研究では,正常咬合者を対象に上下顎歯の歯軸角度と歯列曲線との関係を明らかにする予定であり,国内外の講演会にて発表する予定であるとともに,2021年度内にこれらの結果をまとめた英文論文を作成する予定である.三次元顎運動に関する研究は,今年度内に特許申請を行い,その後,学会発表を行う予定である.
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