本年度は,映像に含まれるさまざまな色成分が生体に与える影響を定量的に評価する方法を提案し,その影響のメカニズムを解明することを目的とした.具体的には,色成分が自律神経活動・眼精疲労・睡眠に与える影響を調査した. 先行研究の調査結果から,映像の色成分の中でもブルーライトは交感神経を刺激し,オレンジライトは副交感神経を刺激するという仮説を立て,その検証を行った.評価するにあたり,眼精疲労の指標であるフリッカー値と,5 つの自律神経関連指標,アンケートを使用した.本研究では,背景色を指定した小説を20 分読んでもらうタスクを行った.青色背景実験,橙色背景実験,白色背景実験,ブルーライトカット白色背景実験の4 種類の背景色の実験を各色2 回,計8 回行った. ブルーライトとオレンジライトの影響を比較する実験では,「ブルーライトは交感神経を刺激し,オレンジライトは副交感神経を刺激する」という仮説に沿った結果が得られた.また,ブルーライトによる眼精疲労が大きいこと,ブルーライトカットをすることで副交感神経が刺激されるが大きなストレスを感じることなどが結果として得られた.しかし,ブルーライトと不眠を結びつけることはできなかった.また,全体を通して眼精疲労が大きいと睡眠が深くなる傾向にあった.これは,不眠が色成分を起因とするものではない可能性が考えられる.そのため,ブルーライトそのものの影響ではなく,夜間にスマートデバイスを用いて動画視聴したり,ゲームをしたりすることで興奮作用を及ぼし,睡眠を妨害することに繋がる可能性が考えられる. 以上の成果から,ブルーライトは交感神経を刺激するものの,必ずしも不眠とつながるわけではなく,コンテンツの内容によって睡眠を妨害することに繋がる可能性が考えられる.今後は,コンテンツとブルーライトの影響の比較検証を行う必要があると考えられる.
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